クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
結局、私の会社の前まで付き添ってくれた男性は徐にメモを取り出し、ペンを走らせる。
メモを半ば強引に手渡され、きりりとした瞳でこちらを見据える。
「何かあったらここに来い。電話でもなんでもいい、大慈(おおじ)の紹介だと伝えろ」
有無を言わさぬ物言いに、私はこくこくと頷く。彼はさらに続ける。
「腕の傷もきちんと手当してもらえ。 いいか、次また同じようなことがあれば迷わず110番するように」
「分かり、ました。 あの、ありがとうございました…!」
「…ああ、また」
彼は言うだけ言って背を向け、あっという間に姿は見えなくなった。
歩くのはや…ていうか、背高かったな…。
私は手元のメモに目を落とす。
殴り書きで『UTUMI警備保障 大慈瑛輔』の文字。
おおじ…えいすけ…それが彼の名前らしい。
「UTUMI警備保障…」
その社名を私は知っている。文月ホールディングスが使っている警備会社だ。
彼はそこに務めているのだろうか。それなら、さっき私を助けてくれた時の身のこなしも納得できる。
スラリと長い手足は、私に触れた時こそ気遣わしげで優しかったが、真司さんを捕らえた方の手の骨ばった感じ。それにあの鍛え上げられた体格が無ければ、片手に暴漢、もう一方で人を抱き留めるなんてできないだろう。
さらに、終始厳しい顔つきだったが、美しく整った容姿故の威厳というべきか。
真司さんも完全に気圧された様子で逃げていったし、獲物は逃がさないと言わんばかりの獣のような鋭い瞳孔には迫力があった。
なんにせよ、彼のおかげで私は無事お使いを済ませられた。
「いけない、早く戻らないと」
大慈さんが守ってくれたお茶菓子のことを思い出し、私は慌てて社長室に向かった。
水谷のことは報告しなかった。行方の手がかりになるものは何も掴めなかったため、心配をかけてしまうだけだろうから。