クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
って、ダメよ。私は今日このお見合いを成功させに来たんだから。
相手が大慈さんだったのは想定外すぎるけど、むしろこれはチャンスかも。
見ず知らずの人間と突然結婚ってなるよりは、お互いに踏み込みやすいんじゃないかしら。

よし。やっぱりまずは、2人きりになって彼と話をするところからよね。

食事が終わったタイミングを見計らって…と2人になる口実を脳内シュミレーションしていた時だ。

「すみませんが、凜さんとふたりで話がしたいので席を外してもよろしいでしょうか」

低く響いたのは大慈瑛輔の声だ。お酒も入り気分上々と言った感じの父が笑い声をあげる。

「それはもちろん構いません! 大慈さん、娘をどうぞよろしく頼みます」
「瑛輔。そんな仏頂面ではお嬢さんの心は掴めないぞ。しっかりせんか」

御祖父様!ナイスです。やっぱりご家族には分かるわよね、この鉄仮面っぷりが!

「はははっ。凛々しい振る舞いがなんとも警察官らしく頼もしいじゃありませんか」

私の心の声をすかさず父が笑い飛ばす。

「娘さんのことは、私にお任せ下さい。僕が如何なる危険からもお守りします」

大慈さんの言葉に私は面食らった。思わず彼を凝視すると、何も言わずに私の手を引いて部屋を出るよう促される。

父の楽しそうな笑い声を背に、私は彼に連れられて廊下を歩いた。
小柄な私は着いていくので精一杯で、いつの間にか庭園に出ていたことに気づくと不意に大慈さんが足を止める。
急だったのと庭園に気を取られていたせいで彼の大きな背に鼻がぶつかって悲鳴をあげた。
なんとも可愛くない鼻の潰れた悲鳴である。

「す、すみません…」
「文月凜」
「は、はい…?」

もはや私がぶつかったことに気づいているかどうかも怪しい。それくらい間もなく唐突に、彼はにこりともせずに私の名を呼んだ。
明らかに彼の纏う空気が変わった。取り繕った笑顔はおろか、先程まで感じていた違和感までも。

初めて彼に会った時の、危うく鋭くて強引な感じ。
さっきの父の前での私を守る…とか何とか言う台詞も、場をしのぐために用意したものだろう。
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