クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
まあ私とは恋仲ではなかったのだけれど、婚約者がいる身分でうちの社員と付き合いだしたらしい。私はそれを噂で聞いただけだったが、次第に彼は堂々とその彼女との仲良しっぷりを見せつけるようになった。

いくら愛がないとはいえ、由緒正しい家系の生まれのはずの坊ちゃんが婚約者の目の前で他の女とキスする? 普通。

『凜ちゃんのことは愛せないよ。彼女のことを愛しているんだ!』

なんて涙目で宣言された時は、こんなにも滑稽な男が存在するのかと頭が痛かった。
真司さんの愚行はそれだけに留まらない。なんと、彼が愛する彼女は1人だけではなかったのだ。

そりゃあ、最初は私も仕方の無いことだと割り切って、婚約破棄についても考えた。私と婚約したあとに、偶然にも愛する女性に出会ってしまったのだと思っていたから。

それがどうだろう。愛人は2人3人と増えていったのだ。

仕事においても、営業部での成績は決して良いとは言えず、社長の娘の婚約者という肩書きに付け上がる有様。

父も真司さんの素行については把握していたが、何せ企業が絡んだ婚約関係だったため簡単に婚約破棄することもできず、ようやく水谷家との折り合いがついたのが2ヶ月前。

父は白髪が増えたと嘆いていた。私はというと、やっと名ばかりの婚約者のために定期的にディナーの時間を割く必要が無くなったという解放感の方が大きかった。1番苦労したのは間違いなくこの縁談を持ってきた父だろう。

その父が、この件は内々で解決すると言っているのだ。
やっと水谷家から解放されたと思ったのに、あの男は取り返しのつかないことをしでかしてくれた。

文月家を荒らし、婚約者に与えられていた権利を利用して財産まで持ち出すなんて。一体どこまで落ちぶれるつもり?
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