クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
だけど、どうにもむず痒い。
瑛輔は緊張とかしないの?
今日から私たち、一緒に寝るのよ。
私は男の人と2人で住むなんて初めてなのに、いつも通り涼しい顔しちゃって。

ああ、なんかムカついてきた。

「瑛輔。キッチンが終わったら買い物に行こうと思うんだけど。私の母に貰った分だけじゃ、明日まで持たないでしょう」
「俺も行く。慣れない道だ。しばらくは俺か、タクシーを使え」
「スーパーまで歩いて5分よ? ひとりで行ける」
「駄目だ。一緒に歩く」

もはや駄々をこねる子どもみたいになってるけど…譲る気はなさそうだ。

「じゃあ、荷物持ちで一緒に来てもらう」
「それでいい。 あとはやっておくから、出かけられる支度をしてこい」
「はーい」

素直に返事をした私は寝室の隣のウォークインクローゼットを開ける。
作業のためのラフな格好から着替え部屋を出ると、瑛輔もやってくる。

「私服はそんな感じなんだな」
「どういう意味?」
「スーツもドレスもいいけど、そういうのも悪くない。おまえの雰囲気に似合ってる」
「何よ急に…気味が悪いんだけど…」
「リップサービスだ。俺たちはこれから入籍を控えたラブラブなカップルだろ」

それなら『可愛い』の一言くらい言いなさいよ!
悪くないとか似合ってるとか、遠回しすぎるでしょ!

「では私からも。瑛輔はプライベートでも黒づくめなのね。ボディーガードみたいでとても強そうよ」
「それは嫌味か?」
「リップサービスです」

私はしたり顔で言って玄関に向かう。
素直に褒められないくせに偉そうな瑛輔が悪いのよ。

今度は私が子どもみたいな拗ね方だ。

それから少し遅れてやってきた瑛輔を見て私は僅かに目を見開く。

「き、着替えたの?」
「可愛い妻の横を歩くのに、たしかにボディーガードじゃ味気ない。 これなら文句ないだろう」
「そ、そう…」

瑛輔はにっと口角を上げる。私が分かりやすく赤面するから面白いとでも思っているのだろう。

もう、なんなのよ。可愛いとか、ほんとに言うとは思わないじゃない。

どぎまぎしたまま、私は外に出た。
冷たい風に当たれば冷静になれると思ったのに、今日は昼間、ここ最近でいちばん気温が高いとニュースで見たのを思い出す。
案の定、ぽかぽかと陽気に太陽が照っていた。

「凜」

ひとりで歩き出した私を追ってきた瑛輔が、さも当然と言わんばかりに左手を差し出す。
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