クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
元婚約者の件で、瑛輔の手を借りるまでは事務処理で会社にこもりっぱなしだった。
もともとなんでも自分の目で見て決めたい行動派な父には窮屈だっただろう。

「今度の休みは実家に帰ろうかな」
「瑛輔くんが寂しがるんじゃないか? 家族に気を使う必要はないよ」
「瑛輔は寂しいとか言うタイプじゃないもの。たぶん、快く送り出してくれるわ」

私が言うと、父は声を上げて笑った。

「男ってのはなぁ、見栄を張りたい生き物なんだよ。私も昔は、母さんの前では強がってばかりいたものだ。そのせいで大喧嘩したこともある」
「ええ? そんな話、聞いたことないんだけど」
「言ってないからな。凛が産まれる前の話だ」

私から見た両親は歳をとっても仲が良い。喧嘩をしている所は幼い頃の記憶でも見たことがないので、大喧嘩とは想像もつかない。きっと結婚当初からそうなのだと勝手に思っていたから、少し驚いた。

「おまえたちは喧嘩だなんだも、これからだろう。そういうのは若いうちにしておけ。そうやってお互いの、心地よい場所を見つけるんだ」

父の言葉が胸に重く響く。
私と瑛輔は、ぶつかり合うことなんてない。
せいぜい軽い言い合い程度で、お互い本気で思ったことを伝えるような関係性ではないのだから。

両親の姿を想像したら、なんだか少しだけ寂しい気持ちになった。
瑛輔との距離は、一緒にいるうちにちょっとでも縮まっただろうか。
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