クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
「真司さん、あなた…」
「お金を貸して欲しい! 僕、今とても困っているんだよ。君のお父さんの差し金で実家にもマンションにも毎日のように文月の人が来るんだ。そのせいで家には帰れないし、ホテルを転々としていたらお金も尽きて…もう何日も何も食べていない!」

彼が述べるあまりの文言に、何から突っ込むべきかと呆れて頭痛がした。

うちから盗ったお金が底を突くって一体どんな生活をしていたらそうなるのだろうか。そして、それでこの状況で私の元を尋ねるとか、本当に頭のない人ね。
父が寄越した人のせいで家に帰れないですって…?当たり前じゃない。あなたは今追われている身なのよ!?

「ふざけないで…! あなたのせいで文月は今大変なの。皆あなたを必死に探しているわ。それなのに、ノコノコ私の前に現れるなんて呆れてものも言えない。けれどこちらにとっては好都合よ。一緒に来なさい。あなたの犯した罪、きっちり償ってもらうから」

一息に捲したてると、生気のない目を僅かに丸くして、真司さんは俯く。
婚約していた間、彼の前でこんな風に声を荒らげたことは無かったし驚いただろうか。あの頃は真司さんを支えられる良き妻になろうと振る舞いには気を使っていたから。
けれど今、そんなものは必要ないのだ。

元々気が弱く頼りない真司さんだ。私の剣幕に圧されて折れてくれただろうと追い打ちをかけようと口を開きかけた。

「…んで……なんで、? 凜ちゃんが僕の言うことを聞いてくれない…僕のお願いなら絶対に聞いてくれると思ってたのに…!!」

下を向いたまま呟いたかと思ったら、語気を強めて彼は怒鳴った。
びくりと肩を揺らした私は反射的に後ずさる。
この人は、私の知ってる真司さんじゃない。
近づいてはいけないと勘が訴える。

「凜ちゃん、凜ちゃん、僕のところにおいで。話はそれからにしよう。まずは君を僕のものにしないとね」
「真司さん、なにを…」
「こっちへ来るんだ!」
「きゃっ、は、離して…!」

がしりと手首を捕まれ、痛みに顔を歪める。力が強すぎて抵抗できない。

この人、完全におかしい…!
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