クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
そうして見合い当日。

熟考の末、俺は凜に完全なる政略結婚を押しに押した。
凜は俺の事など覚えていないだろうから、あくまで利害の一致を理由にした結婚なのだと説いた。
少し強引にことを運びすぎた気もしたが、緊張もあり焦っていた俺は正直自分が何をどう言いくるめたのかあまり覚えていない。

計画通り結婚できたところまでは良かったものの、すぐに自分の不器用さに辟易した。

距離の詰め方が分からず、凜に嫌われたくない一心で家に帰るのを躊躇った。
凜にとって俺は、金をちらつかせ家族と会社を人質に迫った極悪人だろう。
素直に褒められもしない俺に凜は遠慮なく言い返してくるのが内心嬉しくてしょうがなかったが、俺が家にいない方が凜は気楽なはずだ。

最初のうちは、俺が無害であることから示さなければならないと思ったのだ。

そんなふうに余裕をかましていたら、凜と仲の良い同期の男が現れ俺はプチパニック。

佐々木という同期がいるのは身辺調査で知っていた。だが2人きりではないと言え飲みに行くほど親しいとは思わなかったのだ。

凜がそいつを好きだったらと思うと不安で堪らなくなって、無理やりキスをしようとした。
凜は驚きと動揺で瞳を揺らした。拒否されなかったのをいいことにこのまま襲ってしまおうかとも思ったが、すんでのところで理性を取り戻す。

凜がどう思ったかは分からない。だが俺を避けたりはしなかった。

これは、もしかして意外と……

そんな自惚れた考えもした。
昔から周りには祖父や兄など男ばかりだったので、いかんせん女性の気持ちを汲み取るのは苦手だ。

考えあぐねていたところに、警察学校時代の同期がアメリカから帰ってきた。
戸田杏子(とだ きょうこ)。数年前に結婚して退職し、旦那についてアメリカへ渡った、口調も態度も男勝りなやつだ。

アメリカ生活で彼女の持つ暑苦しさに磨きがかかったのではと思うほどアグレッシブな戸田は職場に顔を出すと、俺が任務に出ていると知るや否や現場まで押しかけてきたらしい。
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