クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
「瑛輔?」

凜の不思議そうな声にコホンと咳払いをして向き直る。

「わ、悪い。凜が見たのは、戸田杏子。俺の警察学校時代の同期だ。数年前に結婚した旦那についてアメリカへ行っていたのが、一時帰国したらしくて。俺の結婚を聞きつけてわざわざ会いに来たんだ。その流れでホテルのアフタヌーンティーへ行った。たしかに戸田といると気が抜けるけど、昔からお互い男女として意識したことはない。現に戸田も俺も既婚者だ。……って、こんなの、不貞を疑われても当然だよな。今身の潔白を証明することもできない」

凜は目を伏せ、かぶりを降った。

「…ううん。分かった。瑛輔は嘘をつくような人じゃないもの。あなたを信じる。私も、勝手な勘違いで早とちりして…ごめんなさい」
「凜」
「あれ…なんで…」

凜の瞳から涙が伝うのを見て思わず抱き寄せる。凜は大人しく胸に収まって、遠慮がちに服をきゅっと握った。

「瑛輔の腕の中、安心する。…子どもの頃、祖父が亡くなった時にね、誰かにこうしてもらったことがあるの。よく思い出せないんだけど」

それは俺だ。そう言ってしまいたくなるが堪える。せっかく凜と仲直りできたのだ。混乱させたくない。
今はこれでいい。凜をこの手で抱きしめられて、俺は幸せだ。

「凜。俺はおまえ以外の女に興味はない。妻であるおまえだけが特別で、ずっと守っていきたいと思ってる」
「うん」
「不甲斐ない俺を、許してくれるか?」
「いいよ。……でも、」

ちゅっ。そんな可愛らしい音と共に頬に柔らかい何かが触れる。
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