クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
代わりに聞こえてきたのは、聞くに堪えない真司さんの情けない悲鳴。
「怪我をしたくなければ大人しくしろ」
ふわりと香るムスクと共に聞き慣れないバリトンボイス。凛と響いたその声に、私はそっと目を開けた。
声の主は私に背を向け、真司さんの両腕を後ろで捕えているようだった。
「だ、誰だ…! 一体なんなんだ、文月の人間なのか!?」
「だから大人しく…――って、おい、大丈夫か!」
助かった……なんだかよく分からないけれど、この人が助けてくれた。なんとなく、それだけは分かる。真っ黒のスーツの大きな背中に、足の力が抜けていく。
男性はその場に崩れ落ちそうになった私の手を咄嗟に掴むと、くいっと身体を抱き寄せた。その手には落としたはずの一刻堂の紙袋もしっかりとある。
「おいっ、気ぃ抜くのはまだ早い。しっかりしろ!」
男性が焦った様子で私を見下ろす。顔を上げ、男性の顔を初めて視界に入れた瞬間、身体がぐらりと揺れた。
「あっ、クソッ、待て!」
真司さんが男性の手を振り解いたのだ。そのまま足を縺れさせながら走り去っていく背を、私は呆然と見送った。
「怪我をしたくなければ大人しくしろ」
ふわりと香るムスクと共に聞き慣れないバリトンボイス。凛と響いたその声に、私はそっと目を開けた。
声の主は私に背を向け、真司さんの両腕を後ろで捕えているようだった。
「だ、誰だ…! 一体なんなんだ、文月の人間なのか!?」
「だから大人しく…――って、おい、大丈夫か!」
助かった……なんだかよく分からないけれど、この人が助けてくれた。なんとなく、それだけは分かる。真っ黒のスーツの大きな背中に、足の力が抜けていく。
男性はその場に崩れ落ちそうになった私の手を咄嗟に掴むと、くいっと身体を抱き寄せた。その手には落としたはずの一刻堂の紙袋もしっかりとある。
「おいっ、気ぃ抜くのはまだ早い。しっかりしろ!」
男性が焦った様子で私を見下ろす。顔を上げ、男性の顔を初めて視界に入れた瞬間、身体がぐらりと揺れた。
「あっ、クソッ、待て!」
真司さんが男性の手を振り解いたのだ。そのまま足を縺れさせながら走り去っていく背を、私は呆然と見送った。