クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~
「や、やっぱり変よ、瑛輔! 疲れてるんじゃないかしら、今日はもう休んで――」
「凜」
「な、に…――んっ、」

立ち上がり、去ろうとすると腕を引かれ抱き寄せられた。勢いのまま、瑛輔は唇を押し付けた。

「……嫌なら突き飛ばせ」

優しい口付けの合間に、彼は目を細め言う。

ずるい。そんな言い方は。

瑛輔は伺うような視線を向けながら、キスをやめない。こんなことをしてもいいのかとどこか迷いも感じられた。

「…やじゃ、ないよ」

こんな気持ちになるのはどうしてと聞かれたら、理由はひとつしかない。
強引なくせに、こういう時なりきれないでキスもしてくれないところも、今こうして私を抱擁しながら葛藤しているだろうところも、彼を思う度胸がいっぱいになる感覚。

瑛輔が、好き。

きっと、彼が戸田さんといるところを誤解してヤケになったあの時にはもう好きになっていたのだ。
政略結婚した妻としてだけじゃなくて、私を見てほしい。
普通に結ばれた夫婦がすることを、瑛輔と味わいたい。

こんな風にキスをされたら、そんな勝手な想いが溢れてしまいそう。

「もっと、…瑛輔」

気づいたら口に出していて、私は求めるように彼に縋った。瑛輔の肩に手を回して、彼が息を呑むのが分かる。

「…これ以上俺を煽ってどうする気だ」
「べつに、どうもないわ。瑛輔の好きにしてって意味だよ」
「凜は、俺をどう思ってる?」

キスが止まって、瑛輔が神妙な面持ちで聞いた。

どうしよう、好きって言っちゃう…?
でも自覚したばかりで、キスのせいでふわふわしたままだし、変なことまで口走りそう……

考えていると、瑛輔は吐息を零す。くしゃりと髪をかきあげ、眉を下げて笑んだ。
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