クールなエリートSPは極悪か溺甘か ~買われた新妻は偽りの旦那様の執愛から逃れられない~


翌日、午前休を取った瑛輔はお祖父様の荷物を持って病院に行った。
その日はお祖父様も起きて、会話ができたそうだ。瑛輔の表情は安堵に満ちていた。

それから数週間、私たちの日常は平穏に過ぎていった。
不穏な空気が漂いだしたのは、瑛輔から元婚約者の水谷真司についての報告を受けてからだ。

彼は今、行方をくらませている。私の父が集めていた証拠と警察の協力のおかげで逮捕できるところまでは進んだそうだが、水谷本人の居所が掴めないらしい。

瑛輔はいっそう私に対して過保護ぶりを発揮し、朝はタクシーか文月家の専属運転手の車に乗り込むのを見届け、会社の帰りはできる限り迎えに来てくれる。

その日は副社長秘書の佐々木と重役に同行の仕事をしていた。

車を停めて会社のエントランスが見えたところで、佐々木が足を止めた。

「あの人、なんか怪しくないか? 挙動不審…誰か探してる?」

佐々木の視線を辿り、その人物を捉えて背筋が冷えた。
文月ホールディングスの外看板の向こう、猫背の男だ。

「水谷…水谷真司よ、」
「は? おいおい、嘘だろ。あんなだったっけ、あいつ。曲がりなりにも御曹司らしい也はしてたのに」
「追われている身で、そんなことに使う精神も無くなったんだわ」
「というかあいつが探してるのって、」
「……私かもしれない」
「とりあえず中に入ろう、警備員に知らせて……」

水谷から見えない位置まで移動するため佐々木が私の肩に触れたのと、すっかり嗄れた声が私の名を呼んだのは同時だった。
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