The previous night of the world revolution5~R.D.~
アリューシャじゃないけど。

景気が悪かったら、ケーキも不味くなるよね。

これは一体どうしたものか。

とりあえず「不味く」なってきた嬢は捨てて、まだ「美味しい」嬢は残して、お店を整理するとして。

俺の方はひとまずそれで安泰だけれど、ルティス帝国全体が不景気の波に飲まれつつある今、俺だけが安泰でも意味がない。

ルティス帝国全土の景気が回復しない限り、根本的な解決にはならないのだ。

「…そのケーキを美味くするには、どうしたら良いの?アイ公」

「そうだね…。今はね、アリューシャ。皆ケーキを買えないんだよ。お金がないからね」

「マジ?」

「マジなんだよ。だからケーキ屋さんは儲からなくて、仕方なく、いつも使ってる甘くて美味しい砂糖を、あんまり甘くない砂糖に変えなきゃならなくなった」

「やだ!甘くない砂糖のケーキなんてやだ!」

俺もやだ。

「そうでしょう?皆アリューシャと同じように、甘くないケーキなんて嫌なんだよ。だからもっとケーキを買わなくなって、ケーキ屋さんはもっと儲からなくなって、今度はショートケーキに乗ってるイチゴがなくなっちゃった」

「でぇぇー!イチゴのないショートケーキなんて、ショートケーキじゃねぇ!」

同意。

イチゴのないショートケーキなんて、ホテルに入ったのにヤらせない女と一緒。

何の存在価値もない。

「そうだね、イチゴのないショートケーキなんてショートケーキじゃないよね。だからますます皆ケーキを買わなくなって、とうとうケーキ屋さんは潰れちゃって、もうケーキを買うことも出来なくなっちゃった」

「…!なんてことだ…!」

「これが、今のルティス帝国の現状。このまま放っておくと、町中からケーキ屋さんがなくなって、アリューシャはケーキを一切食べられなくなっちゃうんだ」

そう考えると、不景気って恐ろしいね。

なんて分かりやすい。アイズレンシアの不景気講座。
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