運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

二人の事情

「あの・・・ここですか?」

深夜ということもあり佐山先生と共にタクシー乗った私は、都心のど真ん中に降り立った。
見上げるだけで首が痛くなるような高層ビルを前に、私の足が止まる。

「うん、ここの40階」
「へー」

と返事はしたものの、私は驚きと動揺を隠すことができない。
高い壁で囲まれた敷地は広過ぎて全容を把握することもできないし、目の前のエントランスへと続く長い通路も美しい石畳と計算されつくした植栽が近づきがたいようなオーラを醸し出している。
どう見てもここは私には無縁の場所。
こんなすごいマンションに住む佐山先生は、一体何者なのだろうか?
お医者さんって言うからには、お金持ちなのだろうとは思う。
でも、さすがにここはスケールが違う。
失礼かもしれないけれど、一介の勤務医が住む場所ではない気がして、私は急に不安になった。
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