わたしを「殺した」のは、鬼でした
 ***

 うっすらと雪は積もっているけれど、今日は優しい日差しが降り注ぐいい天気だ。
 牡丹様が「でぇと」なんて言うから、さっきからわたしの頬に熱がたまってしまって、ちょっと暑い。
 外気はひんやりしているのに、わたしだけお風呂上がりみたいにほかほかしている。

 お邸を出て、緩い勾配のある石畳の道を歩く。
 わたしの歩幅に合わせてくれているのか、千早様の歩みはゆっくりだ。

 少し歩いていると、道幅の広い場所に出る。人通りがやや多くなり、すれ違う人が千早様に頭を下げつつ、珍しそうな顔をしていた。
 しばらく無言で歩いて、千早様が肩越しに振り向いた。

「牡丹に任せはしたが、あれの言うことを何でも聞けと言う意味ではない。嫌なことがあれば嫌と言わなければ、牡丹は調子に乗るぞ」

 どうやら、わたしが牡丹様に遊ばれたと思っているらしい。
 もしかしなくても、牡丹様に言われるがままわたしを連れ出してくれたのは、牡丹様からわたしを守ってくれようとしたのだろうか。

 ……そんな風に考えるのは、自意識過剰かしら。

 だけど、それ以外に千早様がわたしを連れ出す理由がない。

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