わたしを「殺した」のは、鬼でした
「あの、嫌では、ないのですけど……、恐れ多いと言いますか……、それから、お掃除を途中で投げ出してしましました。申し訳ありません」
「掃除など青葉に押し付けておけ」

 さすが叔母と甥の関係というべきか。千早様が牡丹様と同じようなことをおっしゃった。

「それから、牡丹の言うかふぇというものはここにはない。団子屋で我慢してくれ」
「え……?」

 わたしが目をぱちくりさせている間に、千早様は歩みを進めて、軒先に白い傘が飾られたお店の前で止まった。
 千早様が引き戸を開けて店の中に入ると、中から着物の上に割烹着を身に着けた三十代手前くらいの外見の女性が姿を現す。

「おやまあまあ、暁月様、いらっしゃいまし」
「団子を食べに来た。静かな席を用意してくれ」
「それでしたら奥の方にどうぞ」

 女将さんがわたしを見て興味深そうな顔をした後、奥まったお部屋に案内してくれる。
 赤い天鵞絨(びろーど)のかかった長椅子に並んで座ると、ややあって、女将さんがまあるい卓子(てーぶる)の上に焼き団子とお茶を出してくれた。

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