わたしを「殺した」のは、鬼でした
 お団子を食べ終わって、少しばかり休憩を取ってから、わたしは千早様に連れられてお団子屋を後にした。
 お邸に帰るのかと思ったのだけど、来た道と逆の方へ千早様が歩いていく。もう少し散策するのかもしれない。

 ……でぇと。

 出かけに牡丹様が言った言葉がまた思い出される。
 これは「でぇと」なのだろうか。
 そもそも「でぇと」について詳しく知らないから判断がつかない。
 しばらく歩くと、大きな瓢箪池のある庭園にたどり着いた。
 池の周りにはこもを巻かれた松の木が植えられていて、細い葉に白い雪が積もっている。

「寒くないか」

 白く染まった吐息が空気に溶けていくのを見ていると、千早様が訊ねてきた。

「はい、大丈夫です」

 羽織を纏って来たし、温石も忍ばせている。
 何より千早様が繋いでくれている手が温かくて、それほど寒いとは感じない。
 池のほとりをゆっくりと歩いていると、千早様がぽつりと言った。

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