わたしを「殺した」のは、鬼でした
「悪かったな」

 ……悪かった?

 突然の謝罪を受けて、わたしは千早様を見上げた。
 千早様もわたしを見下ろしていて、何度見ても綺麗な赤紫色の瞳がわたしを映している。

「お前の意思を聞かずにお前を鬼に変えた。……お前は、道間らしくない」

 つまり、わたしが道間らしくないから、千早様はあのときわたしを鬼に変えるべきではなかったと思っていると言うことでいのだろうか。
 山の中で千早様にはじめて会ったとき、千早様の目には道間への憎しみがあった。
 道間は鬼や魑魅魍魎を狩る一族だ。
 そんな道間の人間が鬼に変質させられれば、発狂するほど怒り狂っただろう。
 もしかしなくても、千早様は道間への復讐心からわたしを鬼に変質させたのだろうか。

 ……だけどわたしは、道間であって、道間でないから。

 千早様が望むような反応を彼に返すことができなかったのだろう。
 そして、わたしが道間らしくないから、千早様はその時のことを、悔やんでいる?

 でも――

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