弟、お試し彼氏になる。
・・・
『あはは。それにしても、アヤさんのフリーズめちゃくちゃ長かったね』
「……う。だ、だって。まさか、登録してすぐ話すことになるとは思ってなくて。わ、笑いすぎ」
そう楽しそうに笑われて、抗議はしたものの嫌ではなかった。
『でも、出てくれたんだ。ありがとう』
「……ううん」
年齢も二歳ほど春さんの方が下なくらいで、もちろん他人で初対面ですらまだないということもあり、最初こそお互い敬語だったけど、打ち解けるまでそう時間はかからなかった。
『で、どうだった? 声の相性、96%の感想は? 』
「……そ、そっちこそ。まずは、先輩の感想が聞きたい」
そうはぐらかした時点で、もうバレバレ。
『さっきも言ったと思うけど。もしかしたら、って思ってたのが確信に変わった。これ、結構すごいね』
「……うん」
(どうしよう、好きな声だ……)
最初の「こんばんは」で、既にそう思ってた。
春さんの話し方とか、めちゃくちゃ緊張してどもりまくる私への気遣いとか、年下なんて全然思えない余裕とか。
どれもが心地よくて、ずっとこの声を聞いていたくなる。
『実はね。先輩、何人かと話したけど……あんまりピンと来なくて。これで最後にしようかなって思ってたところだったんだ』
「え……」
(……あ……)
嫌だ。
はっきりそう思った自分に驚きすぎて、間抜けな声が漏れた。
「そ、それって何%くらいの人だったの」
『そりゃ、わざわざ低いパーセンテージ目掛けていかないじゃない。向こうから架かってきたこともあったけど、相手もそうじゃないかな。そもそも、あんまり低かったら紹介してもらえないシステムだと思うし。でも、96%ほどじゃなかったよ』
誤魔化し方も、下手くそで最低。
なのに、必要ないと分かっていながら丁寧に説明してくれるのも大人だ。
『これで最後って思ってよかった』
「……そ、っか」
やめちゃうんだ。
そうだよね。
春さん、聞いてる限りではこんなアプリ必要なさそうだもん。
私みたいな、もうこれが上手くいかなかったら終わりみたいな、そんな状況じゃない――……。
『おかげで、君と知り合えた。……その言い方も、まだ早いよね。だから、お願い』
――もっと、お互いのことを知り合いたい。