結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
「はい、ぜひ行きたいです」
『そうか、よかった。それじゃ行きたいところだとか、やりたいこととかあれば考えておいて。俺も考えてみるよ』
「あっ、くれぐれもフライト中は」
『もちろんわかってる。史花はほんと真面目だな』


 優成に言われてハッとした。有能なパイロットの彼に余計なお節介も甚だしい。

 昔、『一緒にいてもつまらない』と言われた過去を思い出した。〝真面目イコールつまらない〟といった図式が頭の中に浮かぶ。優成にまでつまらない女だと思われたくない。


「すみません。今のは聞かなかったことにしてください」
『気にするな。じゃ、そろそろ行かないと』
「はい、お気をつけて。あの……」
『なに?』


 聞き返され、「なんでもないです」と誤魔化す。〝楽しみにしてます〟と言いたかったが、恥ずかしくて無理だった。
 通話を切り、ほっと息を吐く。未だに彼との電話は緊張してしまう。

(でも前よりはマシになったよね)

 以前は優成の受け答えを想定したシナリオに近いものが必要だったが、随分と普通にしゃべれるようになった。シナリオを使っていたときは思い通りの会話にならず、焦りに焦ったものだ。
二週間でここまで進歩すれば大きな成長だろう。


「あっ、コーヒーカップの話をしそびれちゃった」


 話題が予想外の展開になったため、コーヒーカップの〝コの字〟も出てこなかった。

 必要なかったネタのメモを畳み、元の場所に戻す。

(シャワーを浴びてこよう)

 史花は、どことなく弾む気持ちでバスルームに向かった。
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