結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?

 およそ二時間半後、史花たちは山間の目的地に到着。初デート候補にドライブを安易に入れたのを、史花は密かに後悔していた。
 二時間半もの長時間を密室でふたりきりで過ごすのは、ぎこちなさの抜けないふたりには難易度が高かったのだ。

 もともと優成も史花もおしゃべりなほうではなく、必然的に会話が途切れる。念のためにバッグに忍ばせてきたメモをもってしても、あまり上手に話せなかった。

 窓から見える景色を指差しては、『山が青々としてますね』『雲がひとつもないですね』と言うのに精いっぱい。運転中の優成はよそ見ができないというのに。

(優成さんにまでつまらない女認定されたくないから、もっとがんばらないと)

もう少し話せる内容を増やそう心に誓いつつ、駐車場で車を降りる。その瞬間、暑さとはべつの空気を感じた。澄んだ風に包まれ、清らかな水音が聞こえてくる。近くに湧き水か川が流れているみたいだ。
 気温は高いのに場所柄のせいか、不快さはだいぶ和らいでいる。狭い車内から出た解放感もあるだろう。


「史花、これを着て」


 優成が後部座席から取り出したものを史花に差し出す。ウインドブレーカーだ。
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