結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
「日没や日の出のごくわずかな時間に見られる大気現象で、空の低い位置にピンク色のグラデーションが現れることがある」
「夕焼けみたいなものですか?」
「いや、広範囲のピンクじゃなくて、アッシュピンクの帯状のラインなんだ。それがビーナスベルトと呼ばれていて、それを境に上の部分が昼で、下が夜。ビーナスベルトの下に見える薄い紺色の部分は、じつは地球の影なんだ」
「地球の影!?」


 驚いた声が洞内に反響する。近くにいた年配の夫婦が振り返ったため、慌てて口元を手で押さえた。


「そう。晴れて空気が澄んだ日のわずかな時間しか見られないから貴重な景色だ」
「素敵ですね」


 景色はもちろんネーミングセンスも。きっと美しいグラデーションが広がるのだろう。


「史花は飛行機にはあまり乗らない?」
「頻繁ではないですけど、一年に何度かは。でも景色というより雲ばかり気になって」


 小さな窓から見える限られた範囲で、雲や航空機の動きを気にせずにはいられない。仕事中だろうが休みだろうが、年がら年中、空模様が気になって仕方がないのだ。
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