結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
上昇気流に乗る想い
七月も終わりに差しかかったある夜。耳障りにならない程度のジャズが流れるバーのカウンターに座り、優成は二杯目のジントニックに口をつけた。
眼前に広がる煌びやかな夜景を目当てに多くの人が訪れるその店は、祖母に史花を紹介されたホテルの高層階にある。広い店内には景色をゆったりと堪能しながら飲めるソファ席もあり、何組ものカップルが肩を寄せ合いグラスを傾けている。
腕時計を確認し、優成はため息をひとつ漏らした。約束の時間はとっくに過ぎているが、待ち合わせた相手はまだ来ない。スマートフォンを確認してみても、遅れそうだといったメッセージすら届いていない。
あと一杯飲み終えても来ないようなら帰ろう。
夜景をつまみに三杯目を注文したときだった。
「ごめん、お待たせー」
落ち着いた雰囲気に不釣り合いな声が背後から響く。待ち人である優成の姉、名都の登場だ。三歳離れた彼女とは父親が違う。
「いったいどれだけ待たせるつもりだ」
腕時計を指し示し、優成は不満を露わにした。
約束の時間を一時間半も過ぎている。