結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
「だから謝ってるでしょう? 仕事なんだもの仕方がないじゃない」


 ウェーブがかかった栗色の長い髪をかき上げ、名都は深い赤色の唇を尖らせた。
目が大きく派手な顔立ちは母親譲り。ついでに言うと恋愛体質も母の遺伝子だ。

 そもそも仕事だろうと休みだろうと、名都は遅刻の常習犯である。
 真面目な史花では絶対にありえない。


「遅れるなら遅れるとメールなりなんなり送ったらどうだ」
「そんなの送っていたらもっと遅くなるもの。猛ダッシュでここまで来たんだから許してよ」


 彼女が勤めるアパレル会社は、このホテルから歩いて五分ほどの場所にある。車を使う距離ではないため、走っていたらたしかにメールは無理だろうと優成は早々に小言を諦めた。


「私はキールロワイヤルで」


 バーテンダーに注文を済ませ、名都は肩から提げていた大きなバッグを隣の席に置いた。


「会うのは半年ぶりかしら?」
「そうだな」
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