結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?

 優成の八月最初のフライトは、熊本発羽田行きの便だった。
 気象条件を満たしていたため、操縦はコーパイの赤池が担当。彼と一緒になるのは今回で二度目になる。優成は管制との通信やモニターを担当していた。

 二日前に姉の名都と久しぶりに飲んだ夜、優成は思いのほか楽しい時間を過ごした。
 酒が進むにつれ結婚とはなんたるかを名都が饒舌に語りはじめたときには、『一度結婚に失敗した人間が俺に説くのか?』と、つい本音を漏らしてしまったが。

 父親が違うと知ったときにはショックを受けたものの、大人になってからも良好な関係を続けていられるのは、ひとえに姉のさばけた性格のおかげだろう。幼いときからよく面倒をみてくれる姉でもあった。


 『記念日は大切にしてあげなさいよ。私なんて誕生日も結婚記念日も忘れられちゃってね。そりゃあ、ほかの男に走りたくもなるでしょう?』


 愚痴混じりになってきたため、アルコールをさり気なく水に切り替えた。

 機体は順調に航行し、羽田まであと十分ほど。駿河湾や富士山が機体の左前方に現れた。コックピットから眺める日本最高峰の富士山は言うまでもなく美しく、雄大な姿を優成たちに見せつける。
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