結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
 白石は史花に向かって言い、眉を上げ下げしてから優成たちに背を向ける。


「あ~あ、やってらんないね」


大きく伸びをしながら遠ざかっていく白石とは反対方向に、環はわざとらしくヒールの音を響かせながら立ち去っていった。


「あ、あの、今、帰ってきたところですよね。おかえりなさい」
「ただいま」


 振り返って答えたものの咄嗟に言葉が続かず、沈黙が舞い降りる。史花がネタを仕込んだメモを携帯していた気持ちが、今よくわかった。
 史花との沈黙は苦痛ではないが、気持ちを自覚した動揺を引きずっているせいだ。

 なにしろ優成は女嫌いだったのだから。恋愛感情とは無縁で生きてきた。

(それをこんなところで自覚させられるとは……)

 史花もなにを話したらいいのかわからない様子で、目をあちこちに泳がせている。

 優成が『史花は俺だけのものだ』と言った余波だろう。意味を図りかねているに違いない。
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