結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
 マンションの前に到着していたタクシーに乗り込むと、強烈な日差しが窓越しに射し込んだ。いつもなら〝暑い〟と口を突く恨み言は、優成に褒められ手を繋いだ喜びで吹き飛んでしまった。たとえその行為が、本物の夫婦になるための手段のひとつだとしても。


 優成に案内されたのは想像もしない場所だった。
ハイブランドな店が軒を連ねる中、エレガントながらも威風堂々と壁に掲げられた『Le・mona』のロゴが眩しい。女性なら誰もが憧れるファッションブランドは、ジュエリーでも大人気だ。

ガラスドアの向こうに見える煌びやかな空間を前に立ち止まる。


「結婚指輪を買おうと思う」
「指輪を? 急にどうしたんですか?」


 この三カ月、ふたりの間では一度もそんな話題は持ち上がっていない。

(今になってどうしたのかな)

「指輪は夫婦の絆の象徴だろう?」
「それはそうかもしれませんが」
「あ、今さらって思っただろ」


 優成がいたずらっぽい目をして史花の顔を覗き込む。
 図星を突かれ、言葉に詰まった。
< 206 / 294 >

この作品をシェア

pagetop