結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
「早速いただこう」
彼に頷き、ナイフとフォークを手にする。美しいオードブルの形を崩すのは心苦しいけれど、カニの香りが食欲をそそる。
そっとナイフを入れて切り分け、口に運んだ。
「ん、おいしい」
蟹のほぐし身とキャビアの塩味が絶妙のバランス。文句なしの味わいである。
「史花に喜んでもらえてよかった」
優成は満足げに口角を上げた。
店員が注いだ赤ワインでもう一度乾杯し、揃ってグラスを傾ける。料理もワインも期待以上なのは、お店の雰囲気の良さのせいもあるだろう。自宅での食事とは違うムードだから。
(今日の、というか最近の優成さんも、なんか感じが違う気がする)
史花に対する言動が以前にも増して優しいから、優成の言葉を意味深に受け取ってしまうのかもしれない。
さっきの〝過去形〟の話もそう。もしかしたら史花を好きになってくれたのかもしれないと期待してしまうのだ。それは史花の一方的な願望にすぎないのに、真夏に現れる蜃気楼のように史花を惑わせる。