結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
恋のクリアランス
史花は夢を見ていた。ゆらゆらと心地のいい揺れと温もりに包まれている夢だった。
髪にやわらかな唇が触れ、誰かが『好きだよ』と囁く声が聞こえる。
誰だろうと夢の中で目を凝らそうとするのに、瞼が重くて開かない。とても好きな声だった。
逞しい腕に抱かれているような、やわらかい真綿で包まれているような、夢と現の狭間で意識が漂う。どっちつかずの気持ちよさに身を預けていたが、不意に鮮烈な記憶が頭をかすめた。
『優成さんと手を繋ぎたい』
ハッとして目を開ける。自分の部屋だった。それもベッドに寝ている。
(あれ? どうして? 優成さんと結婚三カ月のお祝いでワインを飲んで、フレンチ料理を楽しんで……タクシーに乗ったけど、そのあとは……?)
どうやってここまで来たのだろうか。窓の隙間から光が射し込んでいた。
ワインを飲み過ぎた自覚はあるが、消失している記憶を必死に手繰り寄せても思い出せない。その割に頭痛はなく、ただ頭が白く霞んでいるだけ。
ゆっくり体を起こし、自分がしっかりパジャマを着ていることに気づいた。それも、喜乃がプレゼントしてくれたお揃いのパジャマだ。真新しい匂いがする。