結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
 環は優成のスマートフォンに手を伸ばすが、優成はそれを高く持ち上げて届かないようにした。


『津城史花のIDさえあれば、彼女が作ったフライトプランを書き換えるのなんて簡単でしょう? 自分の人生がかかっているんだもの、迷っている余裕なんてないじゃない』
『……何度も言いますが、私にはそんなことはできません』


 環の指示を拒絶する未希の声が震える。
 同様に、目の前にいる環の手も震えはじめた。


『大丈夫よ、沖山さんならちゃんと間違いに気づくでしょうから。そのまま離陸するなんてないわ。まぁ、彼女のところに怒り心頭で乗り込むでしょうけど。アハハハハ』


 環の高笑いが響いたところで、優成が再生を止める。


「これでもまだ知らんぷりを決め込むつもりか」
「な、なによ、なんなのよ……。こんなのあんまりだわ」


 環は首をふるふると力なく横に振りながら口を戦慄かせた。動かぬ証拠を突きつけられ、さすがに逃げられないと悟ったか。
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