結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
 名前を呼ばれて足を止め、そこではじめて顔を見る。優成だった。
 制服に制帽姿の彼は、噂通りの凛々しい姿だ。CAをはじめとした女性たちが騒ぐのも無理はない。

 彼は一緒にいたパイロットに「あとから追いかける」と告げ、史花を見た。


「あとで少し時間を作ってくれないか」
「これから夕食なので、今なら大丈夫ですけど……」
「悪いな。それじゃ、展望デッキに行こう」


 おそらく先日の一件を話したいのだろう。喜乃づてではなく、史花本人に直接断るために。
 進行方向の右手に展望デッキに通じる通路があり、史花はそこを目指す彼の背中を追いかけた。

 ドアからデッキへ出た瞬間、少し冷えた風が頬を撫でていく。この頃、昼間は日差しを強く感じる日も増えたが、さすがに夜はまだ肌寒い。

 行き交う航空機と滑走路のライトが美しい夜景を作り出す。デッキにはその光景を見ようとたくさんの人がいた。
 オーシャンエアラインに就職したばかりの頃は、史花もそうしてここからの景色を楽しんだものだ。

 人の波が切れた場所で彼が振り返る。


「この前は失礼な態度をとって悪かった」
「いえ、私のほうこそ、よく考えもせずに出向いて申し訳ありませんでした」
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