結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
視界不良のテイクオフ

夜勤が明けた二連休の二日目、史花は優成に指定されたホテル、ラ・ルーチェのラウンジへやって来た。そこは喜乃に彼を紹介された場所でもある。

 優成から返信があったのは、史花がメールを送った夜。彼と休みが合ったため、早々に会う日がセッティングされた。

 午後の日差しが射す窓際のテーブルに案内された史花は、そわそわと落ち着かない。心を決めてここへ来たとはいえ、結婚の返事という一大事。店員が運んでくれた水を飲んでなんとかやり過ごす。

ゴールデンウィークを目前に控えた四月後半の太陽は、初夏を思わせるほど力強い。ここ数年、春が短くなったなぁなどと考えていると、ラウンジの入口に自然と目が吸い寄せられた。優成だ。

淡い色合いのブルーシャツにグレーのヘリンボーン柄のジャケットと、ネイビーのストレッチパンツを合わせた涼しげなスタイルがよく似合い、陽光を直接浴びているわけでもないのに眩しい。

(容姿に恵まれた人って、体の中から光を帯びてるのね……)

 ほかのお客さんも見ずにはいられないのだろう。チラチラと視線を投げかける女性たちの目は、みな一様に熱っぽい。

(これで彼がパイロットだと知ったら、きっと輪をかけて熱視線が注がれるんだろうな)

 そういうものにうんざりしていると彼は言っていたけれど。
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