結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
「早速だけど、返事を聞かせてくれないか」
「はい」


 史花は両手を膝の上に揃え、背筋をすっと伸ばした。


「今回のお話、お受けします」


 大事な返事のため、ゆっくりひと言ずつ丁寧に伝える。

(とうとう言っちゃった……)

 覚悟を決めたとはいえ、大きな決断は史花を狼狽えさせた。


「前向きに考えてくれてありがとう」


 職場ではいつも硬い表情をしている彼がにこやかに微笑んだため、意図せずドキッとする。その顔を見ていられず、目線を左右に揺らしながら自分の手元に落とした。


「お待たせいたしました」


 ちょうどタイミングよくアイスコーヒーが運ばれてきたため、間が持ってほっとする。ガムシロを開けてグラスに注ぎ、ストローでかき混ぜた。
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