結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
(……やっぱりこのままじゃいけない)

 史花も席を立ち、通路を歩く彼を追いかける。
 優成はこれから福岡へ飛んだあと札幌へ飛び、大阪へ。そこでステイし沖縄へ行ったあと羽田へ帰ってくる予定である。明日の夕方には帰宅するだろう。

 史花も明日の夜は自宅で夕食を食べるため、一緒に食べようと誘ってみるつもりだ。

 ところが史花が声をかけるより早く、優成を追いかけていた環に先を越された。

 親しげに話しはじめるふたりの間に割り込む勇気は、史花にない。ほとんど接点のなかった史花より、環のほうが彼に近い存在。CAとして彼が機長を務める便に乗ることも多いだろうから。
 現状、名ばかりの妻では、ふたりの会話に割って入っていい気がしなかった。


「津城さん、ステイ先で夕食を一緒にしない?」


 躊躇いもなく既婚者の彼を誘う環の自信にも、太刀打ちできるとは思えない。環もほかの人たち同様、本物の夫婦でないのはお見通しだろう。
笑顔で応じる優成の横顔を見て、なんともいえない複雑な感情が胸の奥に沸いた。

(女嫌いって言っても、やっぱり華やかな女性のほうが一緒にいて楽しいよね)

 面白みのない真面目一辺倒の史花では、優成をあんな笑顔にはできない。
 史花は、楽しそうに遠ざかっていくふたりをなす術もなく見送った。
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