愛亀に溺愛されてます!?

3話

カメ太郎が転入してきて、早くも1ヶ月が経った。
もうみんなカメ太郎を特別扱いしないし、カメ太郎はクラスに溶けこんでいる。
もちろん、女子たちは相変わらずだけど…
最近の学校では、もうすぐ行われる文化祭の準備で大忙しだった。
私も私の担当する『かき氷屋』の準備をしていた。
カメ太郎も私と同じ。(カメ太郎からの立候補だった。女子たちに不満を言われまくって大変だった)。
文化祭は今週の土曜日開催になっている。
私のお母さんやお父さんが来てくれるみたいだし、今から楽しみ!

土曜日の前日になると、もうほぼ準備はおわっていた。

土曜日の朝。
私はいつも寝坊ばかりするくせに、こういう日は早くに目覚める。
今日も5時に目が覚めて、いつもと逆の私がカメ太郎を起こすということになった。
だけど、中々起きない。
私はため息をついた。「はあ…もう置いていくよ?」
「やだあ!待ってえ!」カメ太郎の焦る声が聞こえる。
「僕がいないと寂しいでしょ?…あ、明希ちゃん。」
「うん?」
「明希ちゃんがキスしてくれたら起きれるかも。」
「は、はああああ!?」
朝から私は大声を出してしまった。ムリもない。
顔が一気に熱くなる。
「ムリ!!置いてくよ。」
そう言い私が立ち去ろうとすると、うしろから抱きつかれた。
「ちょ、…何して…」
「あはは。明希ちゃんの心臓すごーい。」
「もう!!」
カメ太郎が私から離れると、横に並んだ。
リビングで朝ごはんを食べていると、いい時間になってきた。
部屋で準備をし、家を出る。
「行ってきまーす!」
外は気持ちのいい晴天だった。

学校に着くと、もう準備ができていた。
あちこちに飾りがしてあり、屋台があり…
私たちは急いで『かき氷屋』に向かった。
かき氷屋ももう準備ができていて、やることがなかった。
私が何度も謝ると、同じかき氷屋の子が「いいよ。」と言ってくれた。
優しさに感動しながら、私は着替えた。
始まるのを待っていると、こんな日までカメ太郎は人気だった。
別のところの子もやってきて、カメ太郎に話しかけていた。
私は心で(その子がカメって信じられます?)と思った。
そういえば、いつか戻るのかな、とふいに思った。
(あのカメ太郎にもう会えないなんて…それはイヤだよ。)

しばらくすると、開始の時間になった。
「いよいよだね!」
わくわくしたように同じかき氷屋の子が言った。

ちょっとすると、初めてのお客さんがやってきた。
小さい女の子とその子のお母さんだった。
私はうしろで別の子がかき氷をやるのを見ながら、どうやってやるのかを学んだ。
ついに私の番になり、お客さんは同じ中学生の子だった。
かき氷機を回して、カップに入れた。
我ながら上手くできて、ほっとした。
「どうぞ。」
と言い渡すと、中学生の子は受けとり、お辞儀をしていなくなった。
次がカメ太郎の番だった。
すぐにお客さんがやってきた。
私はヒヤヒヤしながら見ていたが、予想以上に上手で驚いた。
うしろの女子たちが歓声を上げていた。
やはり、かき氷屋はカメ太郎目当ての女の子が多かった。
だからたまたま私の番だった時には、舌打ちされた。

そろそろ疲れてくると、カメ太郎に囁かれた。
「ねえ、抜けて文化祭デートしない?」
「えっっ!?」
思わず大き声が出てしまった。
「ん?どうした?」
同じかき氷屋の子がキョトンとして聞いてきた。
「え、えっと…」
私はしどろもどろになった。
「抜けてもいいですか?」
あっさりした様子でカメ太郎が聞く。
同じかき氷屋の子はにっこりして、「もちろん。いいよ。ただ、30分くらいしたらまた戻ってきてね。」と言ってくれた。
カメ太郎が「ありがとうございます。」と言って、私の腕を引っ張った。
「うわわ、今行くよ!」
私がそう言っても、手を離してくれなかった。「ねえ、手…」
カメ太郎がにこっとして言う。
「だって、デートでしょ?イヤ?」
私は黙ったままだった。イヤではなかった。むしろ、嬉しい…。けど、そうは言えない。
カメ太郎の手は大きくて暖かかった。

かき氷屋を離れると、他にもたくさんの屋台があった。
私は目を輝かせた。
「どこから行く?」
カメ太郎に聞かれ、私は悩んだ。結果…
「じゃあ、チョコバナナ食べようよ。」
と言った。
カメ太郎はニヤリと笑って
「いいじゃん。明希ちゃんバナナ好きだもんね?」
と言った。
「な、なんで知って…!」
「ふふふ、明希ちゃんのことならなんでも知ってるよ。」
「なんでも!?」
会話していると、チョコバナナ屋に着いた。
けっこう人気で並んでいた。
列を待っていると、いつのまにかカメ太郎の周りに女子の群れができていた。
(さすが人気者…)
私がそう思っていると、カメ太郎は困っているようだった。
どうしよう、助けてあげたいけど…
そこで私に考えが浮かぶ。
よし。
覚悟を決めると、私は女の子たちの前に出て言った。
「ごめんね。カメ太郎は私とデート中だから。」
途端に女子たちの不満の声が飛んでくる。
私はカメ太郎にウインクしてみせた。カメ太郎は唖然としていた。
まだ女子たちは騒いでいた。
「なんでこんな地味子と?」
「うそでしょ?」
「ウチらとの方が絶対楽しいって。」
急に私の体がカメ太郎に掴まれて、カメ太郎の体に寄せられた。
「そうだよ。僕が誘ったんだもん。」
私の顔が熱くなる。
「はあああ!?」
女子たちの騒ぎ声が大きくなる。
しかし、女子たちは先生に怒られ、自分たちのところに戻っていった。
私はほっとした。
と同時に、まだカメ太郎に寄せられていることにドキドキしていた。
「ちょっと…もういいでしょ?」
顔が赤いのを見られたくなくて、そっぽを向いて言った。
「僕はずっとこうしてたいけど。」
カメ太郎のが平然とした音色で言った。
(なんでこの人(カメ)はこういうことが普通に言えるの!!?)
と思っていると、もう順番がきていた。
チョコバナナはチョコとホワイトとイチゴの3種類があったけど、無難なチョコにした。
カメ太郎はホワイトを選んでいた。
屋台を離れ、近くにあったベンチで食べた。
夏祭りぶりに食べるチョコバナナは、美味しかった。
これこれ!という感じ。
「ねえ、明希ちゃん。そっちも食べたいんだけど。」
カメ太郎がこちらを見て言う。
「そっちって…これ?」
食べかけのチョコバナナを指して聞くと、カメ太郎は頷いた。
「まあいいけど…はい。」
チョコバナナを渡そうとすると、カメ太郎が首を横に振った。
「明希ちゃんが食べさせてくれる?」
「ええっ!!」
「ほら、食べるよ?」
カメ太郎の顔が近づいて、チョコバナナを頬張る。
チョコバナナはもう半分ほどなくなっていた。
私は目をまるくした。
「ちょ、…カメ太郎食べすぎ!」
カメ太郎が楽しそうに笑う。私もつられて笑った。
(ああ、楽しいな…)
自然とそう思えた。
チョコバナナを食べおわると、ベンチから離れてまた歩いた。
その後も射的をやったり、りんご飴を食べたり、焼きそばを食べたり、クジを引いたり、迷路をやったり、お化け屋敷に行ったり…(怖くて私が思わずカメ太郎に飛びついた時、カメ太郎は嬉しそうにしていた。決してわざとじゃないからね!!と何度も言ったがカメ太郎はニヤニヤするばかりだった。)
あっという間に30分が経ち、再びかき氷屋に戻った。

そろそろ疲れてきた頃、文化祭がおわった。
もう?と思ってしまった。
でも片付けをして、私はカメ太郎と帰った。
結局お母さんたちには一度も会えなかったけど、クラスの子が「明希ちゃんのお母さん来たよ。」と言っていたので来たらしかった。
家に帰ると、ドッと疲れが出てきた。
自分の部屋のベットにうつ伏せになっていると、側にカメ太郎がやってきた。
「どうだった?」
カメ太郎が聞いてきた。
「疲れたけど、楽しかったよ。」
私は素直にそう答えた。
「僕も。」
カメ太郎の嬉しそうな声が聞こえた。
「そりゃよかった。」
私が言うと、カメ太郎は笑っていた。
(本当楽しかったな。ドキドキの文化祭だった。)
そう思ってから、夜じゃないのに眠ってしまった。


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