あなたが運命の番ですか？

殺陣

　決闘の始まり――、私は刀を構えている猪三郎に斬りかかった。しかし、猪三郎は私の刃を容易く受け止める。
　猪三郎の力は強く、私の力では押し切ることができないため、刃を受け止められると私はすぐに身を引く。
　私は何度も猪三郎に向かって刀を振るうが、そのたびに彼は私の刃を受け止めてしまう。

『どうした！？受け身ばかりでは私を倒すことはできないぞ！それとも、君は私のことを「たかが女」と舐めているのか！！？』

　鍔迫り合いの最中、私は猪三郎を挑発する。
　私は、全く責めてこようとしない彼のことが腹立たしかった。

『私は、君を女だと思ったことは１度もない。君が小十郎となったあの日から――』

　猪三郎が腕に力を込めたことによって、私はジリジリと押されていく。
　このままではマズいと感じ、体勢を整えるため、押し合っていた刀を引いて飛び退く。
　すると、猪三郎は鬼のような形相をしながら、大きく刀を振り上げて、私に斬りかかろうとする。
　その瞬間、――アタシは前園先輩のあまりの気迫に怖気づき、よろけて尻もちをついてしまった。

「痛っ――！？」
「星宮さん！！？」

　前園先輩は模擬刀を下ろして、座り込んでいるアタシの元へ駆け寄る。
　周りで稽古を見ていた部長たちも、アタシが転んだ拍子に「うおっ！？」と驚いたように声を上げた。
「大丈夫？」
　前園先輩は腰を屈めて心配そうな表情を浮かべながら、アタシに手を差し伸べる。
「だ、大丈夫です……。ありがとうございます」
　アタシは前園先輩の手を取って立ち上がる。

「星宮さん、大丈夫？怪我してない？」
　部長たちも心配そうに駆け寄ってきた。
「大丈夫です。尻もちついただけなんで……」
　アタシは「あはは」と陽気に笑った。
　その後、アタシたちは気を取り直して、殺陣の稽古を初めからやり直した。