あなたが運命の番ですか?

スキャンダル③

 新学期、教室へ入ると、水瀬の取り巻き連中が星宮さんと橘くんの話をしている声が聞こえてきた。

「見たかよ、1年の星宮のやつ。一緒に写ってたの、ぜってぇ橘だよな?」
「絶対そうだと思う。あいつ、女もイケるんだな」
「ほんと橘って見境ないよなぁ、1年のアルファの女まで引っ掛けるなんて。しかも、相手は芸能人だし」
「てかさぁ、アルファの女とオメガの男のセックスって、どんな感じなんだろな?やっぱ、星宮が()れる側?」
「あの橘が突っ込めるわけないじゃん」

 下品な会話と下卑た笑い声に、俺は虫唾が走る。

「なぁ、水瀬はどう思う?」
 取り巻きの1人が、椅子に座って腕組みをしている水瀬に話題を振る。
「はぁ?俺が知るわけねぇだろ」
 水瀬はあからさまに不機嫌な様子で舌打ちをし、立ち上がってポケットに両手を突っ込んだ状態で教室を出て行った。

「なんだぁ?あいつ」
「橘を取られたから、妬いてるんじゃね?」
「えぇっ!?まっさかぁ」

 俺は自分の席へ向かう前に、佐伯の席を見た。
 席に座っている佐伯は、顔を伏せて頭を抱えている。
 俺はそんな佐伯の元へ行く。

「佐伯」
 俺が呼び掛けると、佐伯は驚いた様子で顔を上げる。
 佐伯は真っ青な顔をして、脂汗を掻いていた。
「あ、あぁ……、前園か」
「大丈夫か?顔、真っ青だぞ」
 俺がそう尋ねると、佐伯は再び顔を伏せて襟足を掻いた。

「なぁ、前園……」
 顔を伏せたまま、佐伯は声を震わせる。

「……()()()()()()()()()?」

 佐伯の問いかけに、俺は衝撃を受けた。
 そして、俺は迷わずにこう答えた。

「お前だけのせいだとは思ってないよ。でも、()()()()()()()()()と思ってる」

 俺がそう答えると、佐伯は「そうか」と消え入りそうな声で呟きながら肩を落とした。
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