あなたが運命の番ですか?
 それから数分の間、私たちは無言で歩いていた。
 前園先輩のほうをチラッと見上げると、先輩の横顔はまだ少し赤くなっている。
 私が視線を下げると、ふと前園先輩の大きな手が目に入った。大きくて、ゴツゴツと骨張っている手――。
 
 前後にブラブラと揺れるその手に、私は恐る恐るチョンと指先だけで触れてみる。
 すると、前園先輩の手が一瞬ビクッと震えた。それと同時に、私の胸もドキッとなる。
 しかし、前園先輩は手を引っ込めるようなことはせず、むしろ腕の振り方を徐々に狭めていった。
 そして、私は前園先輩の手を見つめたまま、ゆっくりと先輩の手を握った。
 
 私は初めて、前園先輩の身体に触れたのだ。
 前園先輩の手は、皮膚が分厚くて、骨張っていて、暖かい。
 私がギュッと前園先輩の手を握ると、先輩も同じように握り返してきた。
 心臓が壊れそうなくらい鼓動が早くなり、握っている手を通して前園先輩にこのドキドキが伝わってしまうのではないかと不安になる。

「ゆ、優一郎、くん……」
 
 私は声を震わせながら、彼の名前を呼んだ。
 私が名前を呼んだ瞬間、握っている彼の手がまたビクッと震えた。
 急接近しようとしている自分に、私自身も驚いている。
 告白して、初めて手を握って、気が大きくなっているのだろうか。

「な、何……?寿々、ちゃん……」
 私の名前を呼んだ瞬間、握っている彼の――優一郎くんの手が熱くなった。その熱が伝わるかのように、私の身体もカァッと熱くなる。
 恥ずかしくて優一郎くんの顔を見ることができないけど、彼はまた顔を真っ赤にしているのだと思う。そして、この私も――。

「きょ、今日は……、ありがとう」
「……どういたしまして」
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