あなたが運命の番ですか?
 映画館を出た後、優一郎くんが事前に調べて見つけたという「人気のカフェ」へ向かおうとする。
「あれ?おかしいな……」
 優一郎くんは眉間に皺を寄せながら、スマホを睨む。
 スマホの地図を頼りにカフェへ向かっていたのだが、どうやら迷ってしまったようだ。
「こっちかな?」
 優一郎くんは小首を傾げながら路地へ入り、私もついて行く。しかし、優一郎くんは立ち止まって、「あれ?違うのかな?」と小首を傾げる。

「ごめんね、近くまで来てるはずなんだけど……」
 優一郎くんは申し訳なさそうな顔をしながら、辺りをキョロキョロと見渡す。
 すると突然、優一郎くんはある一点を見つめて固まった。
 
 私は「どうしたんだろう?」と思いながら、優一郎くんの視線の先に目を向ける。
 すると、「休憩:4000円~」「宿泊:8000円~」と書かれたピンクの看板が目に入り、私はギョッとした。
 そして、その看板が掲げられている建物がどんな場所なのか、私には分かった。

「あ……、一旦さっきの場所まで戻ろうか」
 優一郎くんは焦った様子で顔を引き攣らせながら、来た道を戻ろうとする。
 私は、そんな優一郎くんの腕を掴んで引き留めた。
 
「えっ……?」
 優一郎くんは驚いた様子で振り向き、私の顔を見る。
 私は、恥ずかしさと緊張で思わず顔を俯かせ、そのまま押し黙った。
 全身の体温が上がり、頬が紅潮しているのが自分でも分かる。

「寿々、ちゃん……?」
 優一郎くんの声には、「戸惑い」と「期待」が滲んでいるように聞こえる。
 沈黙の時間が流れると、私の耳には自分のドキドキと鼓動する心臓の音だけが入ってきた。
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