あなたが運命の番ですか?
「母さんたちは、なんか2人に質問とかしないの?」
お兄ちゃんはママたちに話を振った。
「質問?そうねぇ……。あなた、何かある?」
ママはパパのほうを見る。
すると、パパは箸と茶碗を置いて背筋を伸ばし、真剣な表情でアタシと千尋くんを交互に見た。
「2人は、番になることとか考えてるのか?」
いつもは頼りないパパの口から核心に迫る話題が飛び出して、アタシはドキッとした。
真剣な面持ちのパパの隣で、ママは狼狽えた様子で苦笑いをする。
「や、やだもう、パパったら。まだ2人にはそんな話早いわ――」
「いや、早くはないだろ」
パパは真面目な口調で、ママの言葉を遮った。
「学生のうちに婚約を済ませて、成人したらすぐ番になるオメガは多いって言うだろ?だったら、高校生の2人が『番になる・ならない』の話をしていても不思議じゃないはずだ」
パパは千尋くんのほうを向いて、「ごめんね、千尋くん」と言った。
「私は――、いや、妻や息子にとってもそうなんだが、真琴以外の家族はみんなベータなんだ。だから、オメガのこととか、番のこととかの知識が乏しくて……。何なら、アルファについての知識も乏しいと思う。ベータの私にとって、学生のアルファとオメガの交際がどのくらい真剣なものなのか分からない。だけど、うちの娘が君を私たちに紹介するということは、娘は君との将来を真剣に考えているんじゃないかと思ってるんだ」
パパはアタシのほうに視線を移し、「そうだよな?」と問いかけてくる。
「うん。アタシは千尋くんと番になるつもりだし、千尋くんもそのつもりでいてくれてる。今日は、そのこともパパたちに話そうって思ってたの」
アタシの言葉に、パパは安堵の表情を浮かべた。
「そうか、そうか、そうだったのか。すまんな、今のはパパがせっかちすぎたな」
パパはいつものように、目尻に皺を作って笑った。
「それじゃあ、改めてアタシから言うね」
アタシは箸を置いて背筋を伸ばし、千尋くんのほうをチラッと見る。千尋くんもアタシのほうを見て、コクッと小さく頷いた。
「アタシは高校を卒業したら、千尋くんと番になって結婚もしようと思ってるの。……アタシたちのこと、認めて、くれるかな?」
アタシは両親の顔を交互に見ながら伝える。
すると、続けざまに千尋くんも「あの……」と口を開いた。
「僕は、真琴さんを心から愛しています。彼女に、僕の人生を捧げたいって思ったんです……。僕は、真琴さんと番になりたいと思っています。僕が真琴さんの番になることを、どうか許してください。お願いします」
千尋くんは深々と頭を下げる。
アタシは、家族の前で千尋くんに「愛している」と言われて、内心ドキッとした。
アタシたちの申し出を聞いた両親は、互いに顔を見合って微笑んだ。
「正直なことを言うと、ママはあなた達のことを、まだ子供だと思ってる。ママたちはもう結婚して20年以上経つから分かるんだけど、結婚って人生の大きなターニングポイントだから……。まだ子供のあなた達が婚約することに対して、どうしても多少の不安や心配を抱いてしまうの」
ママは申し訳なさそうな表情で、意見を述べる。そして、「でもね」と続けた。
「あなた達なりの真剣な気持ちは伝わってきた。それに、私たちの娘が軽々しい気持ちで『結婚したい』『番になりたい』なんて言うわけないもの。千尋くんのことも、真琴が選んだ人ならきっと大丈夫って思えるわ。今はまだ子供だけど、真琴が成人するまでの間に、少しずつ心身ともに大人へなっていきましょう。ママたちも手伝うから」
ママは口角を上げて笑った。その隣で、パパも微笑みながら深く頷く。
「じ、じゃあ、婚約を認めてくれるの?」
アタシは恐る恐る尋ねる。
「『婚約』はね?実際に『結婚』しても良いかどうかは、真琴がちゃんと自立できてるか見極めてからよ。まずは、朝ちゃんとアラームを設定して、自分で起きられるようにならないとね?」
「うっ……、ぜ、善処します……」
ママに痛いところを突かれたアタシは、肩をすぼめた。
「まあ、うちのひいばあちゃんも17で結婚したし、何とかなんだろ」
「時代背景が違いすぎるでしょ……」
呑気なことを言うお兄ちゃんに対して、アタシはため息を吐いた。
お兄ちゃんはママたちに話を振った。
「質問?そうねぇ……。あなた、何かある?」
ママはパパのほうを見る。
すると、パパは箸と茶碗を置いて背筋を伸ばし、真剣な表情でアタシと千尋くんを交互に見た。
「2人は、番になることとか考えてるのか?」
いつもは頼りないパパの口から核心に迫る話題が飛び出して、アタシはドキッとした。
真剣な面持ちのパパの隣で、ママは狼狽えた様子で苦笑いをする。
「や、やだもう、パパったら。まだ2人にはそんな話早いわ――」
「いや、早くはないだろ」
パパは真面目な口調で、ママの言葉を遮った。
「学生のうちに婚約を済ませて、成人したらすぐ番になるオメガは多いって言うだろ?だったら、高校生の2人が『番になる・ならない』の話をしていても不思議じゃないはずだ」
パパは千尋くんのほうを向いて、「ごめんね、千尋くん」と言った。
「私は――、いや、妻や息子にとってもそうなんだが、真琴以外の家族はみんなベータなんだ。だから、オメガのこととか、番のこととかの知識が乏しくて……。何なら、アルファについての知識も乏しいと思う。ベータの私にとって、学生のアルファとオメガの交際がどのくらい真剣なものなのか分からない。だけど、うちの娘が君を私たちに紹介するということは、娘は君との将来を真剣に考えているんじゃないかと思ってるんだ」
パパはアタシのほうに視線を移し、「そうだよな?」と問いかけてくる。
「うん。アタシは千尋くんと番になるつもりだし、千尋くんもそのつもりでいてくれてる。今日は、そのこともパパたちに話そうって思ってたの」
アタシの言葉に、パパは安堵の表情を浮かべた。
「そうか、そうか、そうだったのか。すまんな、今のはパパがせっかちすぎたな」
パパはいつものように、目尻に皺を作って笑った。
「それじゃあ、改めてアタシから言うね」
アタシは箸を置いて背筋を伸ばし、千尋くんのほうをチラッと見る。千尋くんもアタシのほうを見て、コクッと小さく頷いた。
「アタシは高校を卒業したら、千尋くんと番になって結婚もしようと思ってるの。……アタシたちのこと、認めて、くれるかな?」
アタシは両親の顔を交互に見ながら伝える。
すると、続けざまに千尋くんも「あの……」と口を開いた。
「僕は、真琴さんを心から愛しています。彼女に、僕の人生を捧げたいって思ったんです……。僕は、真琴さんと番になりたいと思っています。僕が真琴さんの番になることを、どうか許してください。お願いします」
千尋くんは深々と頭を下げる。
アタシは、家族の前で千尋くんに「愛している」と言われて、内心ドキッとした。
アタシたちの申し出を聞いた両親は、互いに顔を見合って微笑んだ。
「正直なことを言うと、ママはあなた達のことを、まだ子供だと思ってる。ママたちはもう結婚して20年以上経つから分かるんだけど、結婚って人生の大きなターニングポイントだから……。まだ子供のあなた達が婚約することに対して、どうしても多少の不安や心配を抱いてしまうの」
ママは申し訳なさそうな表情で、意見を述べる。そして、「でもね」と続けた。
「あなた達なりの真剣な気持ちは伝わってきた。それに、私たちの娘が軽々しい気持ちで『結婚したい』『番になりたい』なんて言うわけないもの。千尋くんのことも、真琴が選んだ人ならきっと大丈夫って思えるわ。今はまだ子供だけど、真琴が成人するまでの間に、少しずつ心身ともに大人へなっていきましょう。ママたちも手伝うから」
ママは口角を上げて笑った。その隣で、パパも微笑みながら深く頷く。
「じ、じゃあ、婚約を認めてくれるの?」
アタシは恐る恐る尋ねる。
「『婚約』はね?実際に『結婚』しても良いかどうかは、真琴がちゃんと自立できてるか見極めてからよ。まずは、朝ちゃんとアラームを設定して、自分で起きられるようにならないとね?」
「うっ……、ぜ、善処します……」
ママに痛いところを突かれたアタシは、肩をすぼめた。
「まあ、うちのひいばあちゃんも17で結婚したし、何とかなんだろ」
「時代背景が違いすぎるでしょ……」
呑気なことを言うお兄ちゃんに対して、アタシはため息を吐いた。