あなたが運命の番ですか？

　家に帰って着替えを終えると、優一郎くんがやって来た。
「卒業おめでとう」
　玄関を開けると、優一郎くんは大きな花束を手渡してくれた。
「えっ！？ありがとう！嬉しい」
　花束を受け取って喜ぶ私を見ながら、優一郎くんは優しく微笑んだ。

「荷物はこれで最後？」
「うん、そうだよ」
　私たちは、服や雑貨などが入った段ボールを、優一郎くんの車の荷台に積める。
　今日から優一郎くんと暮らすマンションには、事前に購入した家具や家電が一通り揃っている。この段ボールをマンションへ運んで、諸々の手続きが済めば引っ越しは完了だ。

「寿々ちゃん、元気でね。身体には気を付けて」
　玄関の前で、お母さんは涙ぐみながら私を見つめる。
「優一郎さん、うちの娘を、どうかよろしくお願いします」
　お母さんは優一郎くんに向かって、深々と頭を下げた。
「もちろんです。必ず、寿々さんを幸せにします」
　優一郎くんも、お母さんに向かって頭を下げる。

「ほら、あなたも出てきて！寿々ちゃんが行っちゃうわよ！」
　お母さんは、リビングにいるお父さんを玄関まで引っ張り出す。
　すると、お父さんは号泣していた。
　
「寿々ぅ……、いつでも帰ってきていいからなぁ……」
　お父さんは嗚咽交じりに言う。
「う、うん……。たまに顔出すつもりだから……」
　お父さんが号泣している姿なんて、初めて見た。

「それじゃあ、行こうか」
「うん」
　私たちは、優一郎くんの車に乗り込む。
　車が発進した直後、私は後ろを振り返った。すると、両親が私に向かって、手を振っているのが見えた。私も手を振り返す。
　遠ざかっていく両親の姿を見ながら、私は寂しさと同時に、安堵を覚えた。