こじらせて、こじらせるほど。




…たしかに私はおにぎりの具で鮭が断トツで一番好きだけど。



「…よく知ってたね」


「俺はお前が一番嫌いな梅が、一番好きだけど?」




そしてペタッと、何かをおでこに貼られた。




「ちょっ、何」



「お前も誰かに買ってもらえるといいな〜」





奴の左手には、梅おにぎり。もしかして…





ミラーを見ると、私の額に貼られた50円引きシール。





「ちょっとやめてよ!!」



「じゃーな、明日も仕事がんばろうぜ〜」



「ちょっ…何これ取れない!意外と粘着力が…!」






そうなのか。



29歳というのはもう、値引きされる段階だというのか。定価ではもう手遅れなのか。




いやいやそんなことはない。最近は晩婚化だし。30代で結婚なんて超普通だ。でもでも。




29歳になって駆け込むように増えた幸せ報告の数々が、なぜか私を少しだけ、不幸な気分にさせる。


普通に仕事があって、元気な両親がいて、ご飯が食べられる。嫌なことがあった日は何にも気兼ねなくストロングゼロが飲める。






私は絶対に、幸せなはずなのに。







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