【改訂版】ぺちゃんこ地味系OLだけど水曜日の夜はびしょぬれ
つながる心
いろんな意味で精神的につらかった桃瀬は、じぶんでもわからないタイミングでポロポロと涙を流してしまった。石和のほうで、かげんを忘れたわけではない。
「理乃ちゃん、どうか泣かないで」
これまでにない痛みを感じた桃瀬は、石和と気息をあわせることができず、ひとりで錯乱した。
「んっ、うぅ〜っ!」
「ゆっくり息をして。あせらないで、ゆっくりするんだ」
「い、石和さん……、石和さん……!」
抱きあうのを中断して桃瀬を気づかう石和は、ふだんから持ち歩くファースト・エイドのガーゼとミニボトルの薬品を使い、応急処置をした。
「はぁ、はぁ……っ」
「だいじょうぶだよ。おちついて。ぼくのせいで傷つけてごめんよ」
「ご……ごめんなさい……。わたし……、また……面倒を……」
「まったく問題ないよ。きみは、がんばっているじゃないか」
石和は、やさしく桃瀬の髪を撫でる。汗ばむ額に張りつく前髪を左右へわけると、そっと、キスをした。桃瀬は情けなさで胸が苦しくなった。
「疲れたよね。このまま少し横になるといい。おちついたらシャワーを浴びておいで。さあ、ぼくは向こうのベッドを使うから、手足をのばして楽にしていいよ」
石和は、桃瀬の躰に掛け布団をあてがうと、五分でシャワーをすませ、ホテルのバスローブ姿でもどってきた。床にひろがっているペチコートやレースをあしらったワンピースを拾い集め、頭から布団をかぶる桃瀬の足もとへ置いた。ホテルまできておきながら、石和を失望させたかもしれない。桃瀬は、じぶんの弱さを呪った。
反対側のベッドへ腰をおろす石和は、「バージンは面倒くさい」という圷のことばを打ち消した。
「面倒だなんて、思うわけがない。そんなこと思ってないよ。ぼくは、きみを大事にする。これからも仲良くしてね、理乃ちゃん」
初体験で泣かせてしまった石和は、桃瀬の具合を気にかけつつ、ルームサービスを利用してブランデーのボトルをかたむけた。……真夜中になり、ごそごそとベッドを抜けだしてシャワーを浴びる桃瀬は、申しわけない気持ちのまま、ぐったりとして落ちこんだ。
「……わたしのバカ、……ばかぁ」
石和の腕に抱かれて享受されるものは、刺激と苦痛だけではない。とはいえ、どうしても素直に身をゆだねることができないじぶんは、どこまでも臆病だった。
「……胸がぺちゃんこで、自信がないから? そんなの、石和さんだってわかってる。それでも、わたしを好きになってくれたのに……」
✦つづく