※修正予定あり【ぺちゃんこ地味系OLだけど水曜日の夜はびしょぬれ〜イケおじの溺愛がとまらない!?〜】
とろける躰
シャワーを浴びたあと、バスタオルを躰に巻いてベッドサイドにもどる桃瀬は、こちらに背中を向けて眠る石和へ、そっと歩み寄った。静かな寝息がきこえる。間接照明による陰影は、イケおじの品位を損ねない。青髭らしき剃りあともなく、眉のかたちも鼻筋も、唇の角度さえ整っている。桃瀬は溜め息がもれた。
「寝顔もステキだな……」
無意識につぶやくと、「どういたしまして」という石和の声に驚いて腰をぬかした。「きゃあっ!?」
「だいじょうぶ?」
気配で目を覚ました石和は、むくっと起きあがり、腕を差しのべてくる。恥ずかしくて赤面する桃瀬だが、その手を取って立ちあがり、石和に引き寄せれて同じベッドで眠ることになる。バスタオルの胸もとを押さえて横になる桃瀬は、石和と至近距離で見つめあい、ハラハラして息をのむ。
「あ、あの、本当にごめんなさい……。わたし、次こそちゃんと……」
石和のサイドテーブルには、見覚えのないブランデーのボトルとグラスが置いてある。……お酒でものまなきゃ、眠れそうになかったのかな。……わたしのせいだ。
桃瀬のぬれた髪に指で触れ、くすッと笑う石和は、余裕のある素振りで会話に応じた。
「ぼくとの関係を必死に考えるきみは、どうしようもなく初心で、とてもかわいらしいと思うよ。……あせらせて、すまなかった。きみの若さに欲がでたのかもしれないな。見てのとおり、ぼくはおじさんだからね」
「石和さんは、カッコいいと思います……。すごく、女性からモテるはず……」
「ひとにくらべて少しはね」
そんなはずはない。云い寄ってくる女性は数しれず、若いころから周囲の目をひく存在である。石和は容姿に恵まれた男だが、勉強して身につけた能力も多く、万能タイプと思われては語弊があった。ゆえに、謙遜する。
「……わたしなんかより、もっと」
容姿だけでなく、生き方に自信のない桃瀬は、石和にふさわしい人間ではない。コミュニケーション能力が低いため友だちもほとんどできず、なるべく目立たないように息を潜めてきた。学業成績も人並みていどで、運動能力も平均値を上まわることはない。家庭内でも、優秀な姉の影に隠れて暮らした。石和ほどの男に、興味を持たれるような存在ではないのだ。
「きっかけは、あの日だと思っているのかい?」
「……え?」
「二十歳の誕生日、きみは、ぼくを部屋に泊めてくれただろう」
「はい……」
「なぜ、信用したの? もし、ぼくにひどいことをされたら、きみは後悔していたはずだ」
「ひどいことって、なんですか? そんなこと、石和さんがどうしてわたしに……」
イケおじが暴力をふるう姿を想像できなかった桃瀬は、怪訝な顔つきをした。無防備というよりは、女性であることを意識していない。幼いころからずっと、異性に好かれるとは思わない桃瀬につき、現状が夢ではないかと不安になるほどだ。身の危険に晒されてもぽやっとする桃瀬は、石和の自制心をゆるがす。いますぐバスタオルを取りはらい、セックスのつづきを要求したくなる。だが、それは桃瀬の気持ちを裏切る行為につき、今夜は眠ることにした。
「い、石和さん」
「なんだい」
「わたしは、あっちのベッドで寝てもいいですか……」
「ぼくの腕のなかでは眠れない?」
「……はい、眠れそうにありません(わたしはバスタオルを巻いてるだけだし……、もし寝ているうちに取れちゃったら、めちゃくちゃ恥ずかしいことになる……)」
反対側のベッドに避難してホッとする桃瀬だが、石和の肉体は雄々しくて、受けいれた男性器の感覚は悩ましく、世の中の人々はセックスとどう向きあっているのか思考をめぐらせるうち、うとうと眠りにつく。他者からの求愛行動や愛情表現に免疫を持たない桃瀬は、初歩的なキスさえ身構えてしまう有様で、長い指が肌に触れるたび、躰はとろけそうになった。
✦つづく