【改訂版】ぺちゃんこ地味系OLだけど水曜日の夜はびしょぬれ

心からぬれた夜


 間接照明(ナイトランプ)に浮かびあがる桃瀬の躰へ、ゆっくり(おお)いかぶさる石和(いさわ)は、平らな胸を愛おしく見つめた。まだ触れてもいない部位がしっとりするのは、桃瀬の呼吸が石和と連動しているからである。

「い、石和さん、わたし、どうしたら……、すごいびしょびしょ……」

「うん、気にしないで、心配いらないよ。きみは、そのままでいいんだ」

 石和以外の男性と経験のない桃瀬だが、全身をゆさぶられると快楽にとらわれた。余裕をなくして腕をシーツへ投げだすと、石和は桃瀬の手に、そっと指をからめてきた。

 ……これって、本気をだしてるのかな? ちがう……よね……? 石和さんはやさしいひとだから、まだ、手かげんしてくれてる……。おなかは熱いけど、なんだか、くすぐったいや……。

「ぼくは、これっきりにはしないよ」

「……え?」

「少し、話をしようか。理乃ちゃんの考えをおしえてほしい。ぼくといるときは、しあわせを感じてもらいたいからね」

 桃瀬はいまにも泣きそうな顔をして、じっと、石和を見つめた。……わたしは、しあわせすぎる。本当は別れたくない……。このまま終わりなんて……いやだ……。石和さんと、ずっといっしょにいたいよ……!


「理乃ちゃん、愛してるよ」

「……っ!?(いま、なんて?)」

「ぼくは、きみを愛している」

「い、石和さん……、わたしも……」

「理乃ちゃん、結婚しようか」

「け、結婚……(え? プロポーズ!?)」

「どうか、ぼくの妻になっておくれ。いっしょに暮らそう」

「そんな、だ、だめです。石和さんにわたしなんか……、ぜんぜんふさわしくない!」

「なぜそう思うの? 年齢が? 職業が? ぼくがきみを好きになった気持ちは、そんなことでは変わらないよ」


 石和は桃瀬の右手を持ちあげてペアリングをはずすと、左手の薬指に嵌めた。……これ、結婚指輪だったの? 同じく、じぶんの右手からペアリングを左手の薬指へ移す石和は、「きみの本当の気持ちを知りたいんだ。どうか、良い返事を聞かせておくれ」と薄く笑う。……わたしは、なんて云えば……。石和さんが好き……、大好き……!

「あ……、うぅ……、うぇ~んっ!」
 
 パイプベッドの上で抱きあうふたりを、カーテンのすきまから月明かりが照らしている。切ない感情を抑えきれない桃瀬は、ボロボロと大粒の涙を流しながら、石和の背中へしがみついた。


✦つづく
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