幼なじみは私の秘密の吸血鬼【マンガシナリオ】

第十一話 自覚

〇昼、学校、保健室

狩夜「俺は……ハンター」
狩夜「ヴァンパイアハンターだ」

驚愕して固まるアルトと姫花

アルト「は……はあ?」

引き攣った笑いを浮かべやり過ごそうとするアルト

アルト「ヴァンパイアハンター? 何言って……」
狩夜「誤魔化さなくていいよ」
狩夜「来栖アルト。君がヴァンパイアのハーフなのは知っている」
アルト「……!」
姫花「……!」

緊迫した空気が流れる
アルト、姫花を庇うように立つ

アルト「てめぇ……何が目的だ」
狩夜「簡単に言えば、君が悪事を働くヴァンパイアかどうか監視しに来た」
アルト「なっ……!?」
姫花「あ、アルトはそんなヴァンパイアじゃ……」

姫花、反論しようとするが熱でくらっとする
それに気付き慌てるアルト

アルト「ば、馬鹿! 安静にしてろ」
姫花「うん……ごめん」
狩夜「………」

狩夜、二人の様子を伺いながら口を開く

狩夜「とりあえず自己紹介は済んだし、これ以上は鷹山さんの体調に障るから俺は教室に戻るよ」

立ち去ろうとする狩夜、足を止め、

狩夜「鷹山さん」
姫花「……!」
狩夜「もし来栖くんのことで相談があればいつでも聞くから」
アルト「んなっ……!」

狩夜、退出する
それを見届け、顔を合わせるアルトと姫花

アルト「あいつ……マジかよ」
姫花「ヴァンパイアハンターってホントにいたんだ……」
姫花「アルトのこと監視しに来たって言ってたけど……大丈夫だよね?」
アルト「別に俺、吸血鬼の力を悪いことに使ってないからなぁ」
アルト「でもその判断もあいつがするってことだろ? あーくそっ、転校までして来やがって、なんなんだよあいつ!」

頭を抱えるアルト
少しの間を置き姫花の方に向き直る

アルト「……っつーか、熱出したって聞いたけど大丈夫なのかよ?」
姫花「えっ、あ、う、うん。へーき、ありがとう」

姫花(アルトのこと考えて知恵熱出ちゃったけど……)
姫花(今度は狩夜くんのことで熱出そうだよ~~~!)
姫花(狩夜くんがヴァンパイアハンターだってなんて……)
姫花(嫌な予感がするなぁ)


〇夜、姫花の家、姫花の部屋〇

ベッドに寝転がり、携帯ゲームをしている姫花

ハント『タカヒメさん、今日はなんかお疲れ?』
タカヒメ『うっ……わかります?』
ハント『いつもより動きにキレが無いなーって思って』
タカヒメ『いやぁ……リアルで色々ありまして』
ハント『そうなんですね』
ハント『俺も明日からちょっと忙しくなりそうなんですよね』
タカヒメ『あぁ~、お互いリアル頑張りましょう』
ハント『ですねー』

姫花「………」

ゲーム機を置いてベッドに仰向けになる姫花

姫花(あぁ~~~ついゲームの世界に浸ってたけど明日からどうなっちゃうんだろう?)
姫花(例えばもし狩夜くんが、アルトのこと悪い吸血鬼だ、って判断したら?)
姫花(そしたらアルトは退治されちゃうのかな?)

狩夜に退治されるアルトを想像する姫花
枕に顔を埋める

姫花(また熱が出そうだよ~~~)


〇翌日、朝、姫花の家の前〇

家の前でアルトを待っている姫花

アルト「おはよー姫花」

いつものように二階の窓から飛び降りてくるアルト
驚く姫花

姫花「ちょっ……だからぁ、怪我するかもしれないし、誰かが見てたら大変でしょー」
アルト「誰も見てねぇって」
狩夜「バッチリ見てたよ」
アルト「うおっ!?」

現れた狩夜に驚くアルトと姫花

アルト「なっ……なんでてめぇが……」
狩夜「昨日言っただろ。監視しに来たって」
アルト「だからってなんで朝っぱらから……」
狩夜「朝も夜も関係無いよ。来栖くんが悪さしてないか監視するんだから」
アルト「ストーカーかよ!」
狩夜「人聞きが悪いな。俺だって面倒くさい任務だと思ってるんだ」

互いに火花を散らすアルトと狩夜
その間に入る姫花

姫花「とっ、とりあえず学校行こ! 遅れちゃう!」
狩夜「………」
アルト「けっ!」

三人、学校へ向かう


〇朝、学校、校庭

体操着で校庭に出ている姫花たち
姫花の目線の先には、女子に囲まれている狩夜の姿

みちる「今日はC組と合同体育だねー」
姫花「だねー」
みちる「ってことは見れるわけだ」
姫花「何が?」
みちる「ウチ(A組)のイケメン狩夜くんと、C組のイケメン来栖くんの対決が……!」
姫花「た、対決って……」
みちる「あ! 噂をすれば来栖くんだ!」

つられてそちらを見ると、夢乃と一緒にいるアルトの姿が
アルト、姫花の視線に気付き手を上げるが、狩夜の姿も視界に入る
バチバチと火花を散らすアルトと狩夜

みちる「なんか知らないけど二人ともやる気満々じゃん!」
姫花「う、うーん……」
姫花(だ、大丈夫かなぁ……)

先生「今日は男女で100M走のタイムを計るぞー」

姫花含め、生徒たちは順々にタイムを計っていく
そしてアルトと狩夜のグループになる

夢乃「アルトくん頑張ってねー!」
みちる「わー。ホントにあの二人が一緒に走るところ見れるとは!」
姫花(うわぁ……ホントに一緒に走ることになるとは……)

見るからに狩夜に対抗意識を向けているアルト

アルト「変な技とか使ってくんなよ転校生」
狩夜「……君こそ、特殊な力を使ったら一発で退治対象になるんで」
アルト「……!」

みんなが固唾を飲む中、アルトと狩夜のグループが位置に着く
先生の合図で走り出す
観衆が湧くほど二人の速さは拮抗している

姫花「アルト……!」

僅差でアルトの方が早くゴールする
肩で息をしながらも、狩夜に対しニヤリと笑いを見せ付けるアルト

姫花(ああああ……また狩夜くんに張り合って……)
姫花(狩夜くんに吸血鬼の力を使ってるとか誤解されてないかなぁ……)

頭を抱える姫花


〇体育終わり、休み時間、廊下

廊下で狩夜と出くわす姫花
なんとなく気まずくなりつつ姫花から話しかける

姫花「あ、あの……」
狩夜「ん?」
姫花「体育の時の話なんだけど……」
狩夜「ああ」

姫花が何を言いたいか察する狩夜

狩夜「彼は彼の実力で走っていたね」
姫花「う、うん……!」
狩夜「まあ、体育の時間なんかで吸血鬼の力を悪用するほど馬鹿じゃないだろう」

狩夜の物言いにホッとしつつムッとする姫花
そんな姫花を面白いと思いながら微笑を向けつつ口を開く狩夜

狩夜「……鷹山さんは来栖くんと幼なじみなんだよね」
姫花「そうだけど。なに? 改まって……」
狩夜「つまり『ツガイ』にされておきながら、恋人じゃないわけだ」

目を見開く姫花


〇回想〇

アルト「人間と共存するために、むやみやたらに人間の血を求めないよう取り決めたルールの一つらしくて、基本的に『ツガイ』以外の血は飲んじゃいけないんだ」
アルト「そう、上書き。『ツガイ』でとくに多いのは、恋人同士なんだって。だから俺も、恋人ができたら『ツガイ』の上書きすりゃいいのかなーって」
アルト「まあ、だからさ……。勝手に『ツガイ』なんかにしちゃって、ごめんな」

〇回想終了〇


狩夜「今まで俺が会ってきた吸血鬼たちの『ツガイ』は、基本的に恋人や夫婦といった仲だった」
狩夜「べつに友人や幼なじみでもいいとは思うが……」
狩夜「それはそれとして、鷹山さんは『ツガイ』にされたことに対して何も思わないの?」
姫花「それは……」


〇回想〇

アルト「そう、上書き。『ツガイ』でとくに多いのは、恋人同士なんだって。だから俺も、恋人ができたら『ツガイ』の上書きすりゃいいのかなーって」
姫花「………」

姫花、胸にチクリと痛みが走る ※アルトの恋人発言への嫉妬と悲しみ(自覚無し)
アルト、姫花の方を向いてにやりと笑う

アルト「それとも姫花~」
姫花「な、なに?」
アルト「俺と付き合う?」

一気に顔を赤くする姫花

姫花「ばっ……何言ってんの!?」
アルト「あはは。冗談だよ。俺たち何年の付き合いだと思ってんの?」
姫花「そうだよ、まったく……」

〇回想終了〇


姫花(あの時はなんとなくうやむやにしちゃったけど……)
姫花(私、ホントは……)

姫花(アルトが他の人を『ツガイ』にするの、嫌だった……!?)
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