貴方が結ぶ二重螺旋 ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
『同じ顔があるなんて気持ち悪い!』
誰かになにかを言われたのか、百合花にカッターで切りつけてきた。
顔をかばったせいで腕に傷を負った。
百合花の悲鳴に気付いた家政婦が止めたからそれだけで済んだが、母が嫌がったために病院には連れて行ってもらえずに大きな傷が残った。痛くて痛くて泣いたが、泣くな! と怒られて必死にこらえた。家政婦はおろおろと消毒して包帯を巻いてくれた。もし病院で見てもらっていたら、これほどの傷は残らなかったかもしれない。
ケガをしたことは誰にも言うなと厳命された。誰かに言ったら罰を与える、とも。百合花は自分が受けているすべての仕打ちは外部に知られてはいけないことなのだと悟った。
でもまだ自分はマシだから。
百合花は自分に言い聞かせ、洗剤を浴槽に塗布する。
世の中にはもっとひどい目に遭っている人もいる。だから自分なんて不幸だと思っちゃいけない。
独特の匂いに顔をしかめながら、スポンジで浴槽をこすった。
ユリの香り、と書かれていたからこの洗剤にしたのに、ぜんぜんユリっぽくない。
あのときに嗅いだユリの香りはさわやかだったのに。
百合花はかつて見たユリの咲き誇る庭を思い出す。
その庭で、百合花はひとりの優しい少年に出会った。
あの男の子……元気でいるかな。
つらいばかりの記憶の中で唯一、ぬくもりのある思い出。
ことあるごとに思い出してはそっと心で包む。
この記憶だけは誰にも奪われない、自分だけの大切な宝物だ。
誰かになにかを言われたのか、百合花にカッターで切りつけてきた。
顔をかばったせいで腕に傷を負った。
百合花の悲鳴に気付いた家政婦が止めたからそれだけで済んだが、母が嫌がったために病院には連れて行ってもらえずに大きな傷が残った。痛くて痛くて泣いたが、泣くな! と怒られて必死にこらえた。家政婦はおろおろと消毒して包帯を巻いてくれた。もし病院で見てもらっていたら、これほどの傷は残らなかったかもしれない。
ケガをしたことは誰にも言うなと厳命された。誰かに言ったら罰を与える、とも。百合花は自分が受けているすべての仕打ちは外部に知られてはいけないことなのだと悟った。
でもまだ自分はマシだから。
百合花は自分に言い聞かせ、洗剤を浴槽に塗布する。
世の中にはもっとひどい目に遭っている人もいる。だから自分なんて不幸だと思っちゃいけない。
独特の匂いに顔をしかめながら、スポンジで浴槽をこすった。
ユリの香り、と書かれていたからこの洗剤にしたのに、ぜんぜんユリっぽくない。
あのときに嗅いだユリの香りはさわやかだったのに。
百合花はかつて見たユリの咲き誇る庭を思い出す。
その庭で、百合花はひとりの優しい少年に出会った。
あの男の子……元気でいるかな。
つらいばかりの記憶の中で唯一、ぬくもりのある思い出。
ことあるごとに思い出してはそっと心で包む。
この記憶だけは誰にも奪われない、自分だけの大切な宝物だ。