貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 ときおりららかは母の財布からお金を抜いているが、気が付いた母は必ずららかの前で百合花を叱責する。ららかが抜いているのを気が付いていて、それで「こんなに怒っている」という姿を見せているのだ。だが、ららかは反省するどころか自分の罪にならないことに安心してさらに盗むだけだった。

 同じ娘なのに、同じ遺伝子を持っているのに。
 どうして差別されるのだろう。
 どうしてこんなに性格が違っているのだろう。
 どうしてこんなにこんがらかってしまったんだろう。
 百合花は答えのない問いを繰り返す。

 趣味はといえば夜中に無料で見られるマンガをスマホで読むことだけ。無料で見られるのは最初だけだから、百合花の馴染みのある展開はいつも主人公が虐げられているところばかりだ。そうして、かろうじて見られるのは、素敵な男性との出会いまで。
 ときどき大量無料で読めるときは、必死に何度も読んだ。主人公が幸せなシーンは特に何度も見返した。

 いつか私にもそういう人が現れるだろうか。ここから連れ出してくれる、素敵な人が。
 そんなラッキーなこと、あるわけない。
 そう思うのに、願ってしまう。

 誰かこの螺旋をほどいて。自分ではもうほどけない。
 がんじがらめに縛って苦しめる螺旋の糸を断ち切って。

 そう思うたびにひとりの少年の顔が思い浮かぶ。彼に二度と会うことはないのだろうに。

 掃除しよう、と決めて百合花はお風呂場に行く。
 百合花は袖をまくった。左の前腕には長くひきつれた傷跡がある。
 小さいころ、ららかに切り付けられたからだ。
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