貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 百合花は焦った。ららかは今までにないくらい必死だ。本当に殺されそうなのだとしたらどうしよう。自分が誰かに知らせたせいで殺されたりしたら。たったひとりの姉なのに。世界でただひとり、同じ遺伝子を持つ人なのに。

 引き返して迅に言うべきだろうか。
 だが、知らせたら殺されるという。

 しかし、ららかの嘘かもしれない。彼女が嘘で百合花を陥れるのは今に始まったことじゃない。母の財布からお金を抜いてとぼけるのはしょっちゅう、部屋を汚したら百合花がやったと言い、ららかにはいつも振り回されて来た。最近まであんなに龍耶といちゃいちゃしていて、いきなり殺されそうになるとも思えない。嘘で迅を騒がせたくない。

 とりあえず様子を見に行こう。そのあとで大変そうなら彼に報告しよう。きっとそれでも間に合うはずだ。
 大丈夫、護衛の人だっているんだから。
 彼らにはなにも言わずに行こう。だったら誰にも言ってないことになるはず。

 百合花はそう思って、ボディーガードがついてきているのを確認しつつお手洗いに向かう。
 彼らを廊下に残して扉を開けてお手洗いに入る。

 直後、広い洗面の前で黒髪のららかが龍耶に後ろからナイフをつきつけられているのが見えた。
 百合花は後ろから口を押えられる。

「声を出すな」
 知らない男性の声に百合花は怯える。男は死角に隠れていたようだ。

「服を脱げ」
 正面にいる龍耶が百合花に命令する。
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