貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
百合花は服のジッパーに手をかけた。下ろすことができずにためらい、ららかを見る。
「お願い、助けて」
 重ねられた懇願に、百合花は決心してジッパーを下ろす。

 服を脱ぐと、控えていた男がそれをひったくり、フィンガーレスグローブも奪って龍耶に差し出す。
 その後はさるぐつわをかませられ、悲鳴を上げることはおろか話すこともできなくなる。両腕はがっちりと後ろから男に掴まれている。

「ああ、まったくめんどくさいわね」
 ららかが龍耶から服を受け取る様子に、百合花は驚愕した。
 ららかはさっさと奪った服に着替え、着ていた服を投げ捨てる。

「イヤリングもしてるの。生意気」
 ららかは百合花の耳からイヤリングをもぎ取り、自身のピアスをはずしてイヤリングをつけた。靴も百合花のものを奪い、履く。

「婚約指輪はしてないのね」
 ららかが百合花の左手を見て言う。
 指輪はまだもらっていなかった。迅が勧めるのはどれも高額で、百合花が遠慮していたのだ。

「こんなの趣味じゃないのに。髪は……崩れて直したことにすればいいかしら」
 ささっと夜会巻きにして、百合花の頭からユリを抜き取り、自身の髪に挿す。

「ユリだなんて気分悪い。私に似合うのは真っ赤なバラなのに」
 どうして、と見つめる百合花にららかは嘲笑を見せる。

「御曹司と結婚するのにふさわしいのは私よ。今からそれを証明しに行くの。あんたは黙って待ってなさい」
「んんん!」
 やめて、と百合花はぶんぶんと首を振る。腕を拘束されているから身動きが取れない。
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