貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「あいつと結婚したら、わかってるよな?」
「お店の開業資金くらい出させるわよ」
 にたり、とららかが龍耶に笑う。

「お、俺も! ヘルプ指名でいいんで指名してください!」
「わかったわよ、みどりん」
 言われた男、倫太郎はへへっと笑う。

「あんたはこれ着て、龍耶の指示に従って。逆らったら殺すから」
 龍耶がナイフをもてあそび、にやりと百合花を見る。

 まさか本当に殺すことはないだろう、とは思うのだが、過去に実際に切り付けられている。人が人を傷付けることはあるのだという事実に、殺されない保証はないのだと震えた。いつも劣化コピーはいらないと言っているららかだ。その殺意がいつ百パーセントの臨界に達するのかわからない。

「あんたはずっと不幸でいるべきなのよ。ふたつに分かれた遺伝子のうち、幸せになるDNAは全部私が持っているの。あんたが不幸でないとバランスがとれないでしょ」
 百合花は絶望した。姉はどこまでも百合花に嫌な役目を押しつけて沈みこませ、自分だけが上澄みの幸福をさらっていくつもりなのだ。

 百合花がららかの服を着ている間に、ららかは百合花のバッグを奪ってお手洗いを出て行く。
 護衛はきっと見分けがつかず、そのままガードを続けるだろう。
 百合花は絶望的な気分で龍耶と舎弟の倫太郎を見た。

 しばらくして外に人の気配なくなると、龍耶の指示でお手洗いを出た。
 指示に従って歩くと、空き部屋の一室に連れ込まれる。
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